ここんところ、若手のサンバにグッとくることがなかったんだけど、この人はいいねえ。
アルフレード・デル=ペーニョ。
ソフトな歌い口の底に、しっかりとした下町のサンバの味が備わっています。
ちょっとした歌い回しに、サンビスタ独特のニュアンスがにじみ出ていて、
こういう<ボッサ>を持ってる人のサンバを聴くと、頬がゆるみますねえ。
ラパの新世代サンバ・シーンを飾る一人で、クリスチーナ・ブアルキとのサンバ・ジ・ファトほか、
ペドロ・パウロ・マルタとデュオをするなどの活躍をしてきた人だそうで、
今回、インスト作と歌ものの本作2作を同時にリリースしました。
クラウドファンディングで制作したのだそうで、
最大の寄附がシコ・ブアルキだったというのが、なかなか美しい話であります。
フルート、サックス、トランペット、トロンボーンも加わったガフィエイラ・スタイルのサンバで、
コーラスにはマルコス・サクラメント、モイゼス・マルケス、ペドロ・パウロ・マルタといった
同世代のサンビスタが勢揃い。アルフレード自身は7弦ギターや、カヴァキーニョ、バンドリンを弾き、
ショーロの味わいをたっぷり堪能できる伴奏も申し分ありません。
レパートリーも、アルフレード自作の4曲のほか新旧織り交ぜ、
一番古い39年の“Do Outro Lado Do Mundo” から、
シロ・モンテイロが歌ったバーデンとヴィニシウス作の“Garota Porongodons”、
クララ・ヌネスが歌った“Moeda” ほか、ジョアン・ノゲイラ、デルシオ・カルヴァーリョに、
同世代でオルケスタ・インペリアルで活躍するルビーニョ・ジャコビーナの曲まで取り上げています。
そして締めはカルトーラの“A Cor Da Esperança”。うるさがたのファンも降参でしょう。
ここ数年オーソドックスなサンバで、
これといったアルバムに出会えずにいましたけれど、これは大当たりでした。
Alfredo Del-Penho "SAMBA SUJO" no label no number (2015)