ライヴ・エレクトロニクスのジャズ マーク・ド・クライヴ=ロウ
クラブ・ジャズのセンスを、ジャズの即興演奏の中に生かせる才人。 前作“CHURCH” を聴いて、マーク・ド・クライヴ=ロウをそう認識したのは、 間違いじゃなかったですね。 インプロヴァイザーであり、プロデューサーであるという資質を 鮮やかに示して見せたのが前作とすれば、 新作ライヴは、ジャズ・プロパーであることを明らかにして、 インプロヴァイザーの才能を発揮した快作となりました。...
View Article超絶ストレンジなシャーデー・カヴァー・アルバム ザ・レヴェリーズ
3年前に偶然知った、カナダのライアン・ドライヴァー。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-08-13 そのユニークな音楽性に惹きつけられていたものの、 どういう人なのかよくわからないままでいたところ、 トロントのインディ・シーンを取り上げた「ミュージック・マガジン」の4月号の特集で、...
View Articleクレズマー・ミーツ・ジンタ フランク・ロンドン
クレズマー・リヴァイヴァルの立役者フランク・ロンドンが来日し、 日本のちんどん・クレズマー楽団、ジンタらムータと共演するという絶好の企画。 ゲストには、ベツニ・ナンモ・クレズマーの時代から、現在のこまっちゃクレズマまで、 日本のクレズマー草分けとして音楽活動をしてきた 梅津和時と巻上公一の二人が顔を揃えるほか、チューバの関島岳郎、...
View Article若者の元に帰ってきたジャズ ジェフ・パーカー
トータスのギタリスト、ジェフ・パーカーが来日中。 5月中にトータスとスコット・アメンドラ・バンドのステージ含む 14公演が予定されているようなんですが、 残念ながら、自身のグループでの公演はないもよう。 ジェフ・パーカーを、ポスト・ロックのギタリストではなく、 シカゴAACMのジャズ・ギタリストとして認識してきた自分にとっては、...
View Articleジャーネットのトゥアレグ ナビル・バリ・オスマニ
ナビル・バリは85年、アルジェリア南東部のオアシスの町 ジャーネットのトゥアレグの音楽一家に生まれたシンガー。 父親のバリ・オスマニ(1953-2005)はウードの名手で、 詩人としても名高い歌手でした。 13歳でギターを弾き始めたナビルは、 父のバンドでダルブッカを叩いて修行を積んだようです。 ナビルの10年デビュー作“TAMGHART IN” では、...
View Article南部ヴェトナムのほのかな郷愁 ハー・ヴァン
ノスタルジックな南ヴェトナム懐メロ集でデビューしたハー・ヴァン。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-12-14 83年生まれの33歳という若さながら、 ヴェトナムのアダルト向けポップスのトレンドとなった、 ボレーロ(ヴェトナム戦争前の抒情歌謡)を歌う歌手です。 レー・クエンのようなドラマティックな濃い口の歌手ではなく、...
View Article大歌手然としていない大歌手 ジュリア・ブトロス
やっぱり、レバノンのジュリア・ブトロス、素晴らしいです。 最初は新作を聴いて、今回は記事を書くのをやめようと思っていたんです。 なんだか、だんだんご立派になっていく感じの歌いぶりに、 共感しづらくなってきたんですね。 今回もプラハ市交響楽団を伴奏に、プロダクションは完璧。 昔からのジュリアの魅力である、エレガントな曲もあるものの、 一方で、いかにも大歌手然とした、威圧的に歌う曲もあって、...
View Article正調アラブ歌謡の神星 ヒバ・タワジ
ジュリア・ブトロスと一緒に、ヒバ・タワジの新作も入ってきましたよ。 ひとつ前の旧作で、DVD付の2枚組ライヴ盤も同時入荷という、 これまたジュリア・ブトロスとまったく同じなんだから、奇遇じゃありませんか。 いやあ、それにしても、ヒバ・タワジの前作“YA HABIBI” は評判になりましたねえ。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-11-29...
View Article43年の眠りを解かれたアフリカン・ポップスの至宝 ザイール74
世紀のタッグ・マッチの前夜祭として開かれた、音楽祭「ザイール74」の録音。 アリが勝利したタッグ・マッチは、 「キンシャサの奇跡」として伝説となりましたけれど、 音楽祭の方は、「ブラック・ウッドストック」の呼び名がついたものの、 映画化もレコード化もされず、人々の記憶から消え去ってしまいました。 それが再び注目を浴びるようになったのは、...
View Articleアフリカン・スタイリッシュなクールネス ジェドゥ=ブレイ・アンボリー
ファンキー・ハイライフのヴェテラン、ジェドゥ=ブレイ・アンボリーの新作。 12年の“SEKUNDE” 以来、5年ぶりのアルバムですね。 前作が出たのと時同じくして、ジェドゥのデビュー作で、 ファンキー・ハイライフの代表的な名盤“SIMIGWA” もCD化されたんだけど、 覚えてる人、どれくらいいるかなあ。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-04-18...
View Articleペルナンブーコのヴァイオリン弾き父子 マシエル・サルー、メストリ・サルスチアーノ
裸電球が照らす、ペンキのはげ落ちた壁。 バイリ(ダンス・パーティ)がはねたあとなのか、 誰もいなくなり、虫の音しか聞こえない夜更けに、 ラベッカを弾く男がひとりと、外で踊る女がひとり。 たまんないなぁ、この写真。 場所はペルナンブーコの田舎町の集会場でしょうか。 屋根の瓦の下に、どでかいスピーカーが付いていて、 この前に大勢の人々が集まって、踊っていたんでしょうねえ。...
View Articleオリンダのテレイロでグルーヴ ボンガール
オリンダのアフロ・ブラジレイロ宗教ナソーン・シャンバのテレイロで活動する 6人組の若者のグループ、ボンガールの新作が手に入りました。 01年に結成したボンガールは、地元のコミュニティで40年以上続く、 シャンバの儀式や祭りで演奏をしているグループです。 06年にリリースしたデビュー作を気に入っていたので、 新作が手に入るとは嬉しい限り。...
View Articleアミルトン・ジ・オランダ・キンテートのライヴァル サラコチーア
アミルトン・ジ・オランダ・キンテートの良きライヴァルとなりそうな、 サラコチーアというレシーフェのグループを知りました。 バンドリン、7弦ギター、ドラムスの3人組で、3人とも83年生まれの同い年。 ベースレスという変則トリオで、アミルトン・ジ・オランダ・キンテートとは 編成が異なりますけれど、ショーロ、バイオーン、フォローをベースとしながら、...
View Articleブラジルの歌ものインストルメンタル・ミュージック トレイス・ノ・ソン
このサンパウロ出身のトリオもいいなあ。 パーカッション、ギター、ハーモニカ(ガイタ)という、 レシーフェのサラコチーアとはまた違った編成の変則トリオ。 トレイス・ノ・ソンのデビュー作です。 クラリネットを加えた2曲目の“A Primeira Dama” のような、 優雅なショーロ曲もやっていますけれど、彼らはショーロのトリオではなく、 インストルメンタル・ミュージックですね。...
View Articleジャズ・ショーロの愉しみ サムエル・ポンペーオ
おお、これはジャズ・ショーロじゃないですか。 今では誰も演奏することのなくなったジャズ・ショーロは、 その名からわかるとおり、北米ジャズに影響されたショーロです。 歴史は古く、30年代にスウィング・ジャズがブラジルに輸入された時代まで遡ります。 といっても、ジャズより歴史の古いショーロゆえ、 当初は、外国で流行しているという新しいインスト音楽を、 ほんのお遊び程度に取り入れたにとどまり、...
View Articleメンフィス・ソウルふたたび ドン・ブライアント
号泣。 48年ぶりの新作だよ? 信じらんない気分。店頭でCDを持った手が震えました。 去年来日した時も、ほんとに?と思ったもんですけど、 ウィリアム・ベルに続いて、ドン・ブライアント、そして先日のスペンサー・ウィギンスと、 サザン・ソウルのレジェンドたちが立て続けに来日して、もう完全復活じゃないですか。 R&Bじゃねえよ、ソウルだよ、おっかさん! そしてこの新作。 オープニングが“A Nickel...
View Articleクールなナイジェリアン・ネオ・ソウル ミスター・イージー
Youtubeでナイジャ・ポップの最新ヒットを眺めていると、 どのヴィデオもゴージャスで、金がかかっていることに驚かされます。 ナイジェリアの音楽ビジネスが、配信やヴィデオの広告売上へと移り、 CDなどハナから制作するつもりがなくなっている現状は、 フィジカル派にはツライものがありますねえ。 おお、これはいいなと、書き留めたアルバムが、ことごとく配信のみで、...
View Articleヒップホップ・ジャズ・ファンク・フロム・ダラス RC&ザ・グリッツ
ネオ・ソウルで思い出したんですが、 エリカ・バドゥのプロデューサー、RC・ウィリアムズ率いる ヒップホップ・ジャズ・ファンク・バンド、RC&ザ・グリッツの新作、 すでにヘヴィ・ロテ4か月目突入です。 2月に来日して、その公演が終った後で、このアルバムを聴いたという、 自分の間の悪さが情けないんですが、観たかったなあ、え~ん。...
View Articleテレコ・テコからサンバランソへ オルランジーヴォ
おー、ようやくブラジルで復刻されたか。 ずいぶん時間がかかりましたねえ。 ブラジル60年代に人気を博したバランソ歌手、オルランジーヴォのムジジスク盤3枚を、 ジスコベルタスがオリジナル・フォーマットで完全復刻。 01年にイギリスのホワットミュージックが復刻して、話題を呼びましたけれど、 ブラジル本国での復刻は、これが初。...
View Articleサンパウロ発アヴァンなポスト・パンク キコ・ジヌスィ
音楽って、出会いだなあと、つくづく思いますね。 自分の守備範囲だけしか聞かずにいたら、 こんなポスト・パンクな轟音に満ち溢れたアルバムと 出会うチャンスなんて、まずなかったと思うんですよ。 キコ・ジヌスィの本ソロ・デビュー作に出会う発端となったのは、ロムロ・フローエス。 このサンパウロの前衛サンバ作家に惚れこんでいたぼくは、 ロムロが参加しているグループ、パッソ・トルトも聴き、...
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