フェミ・ソーラーの絶好調が止まりません。やっぱ並外れてますね、この人は。
ナイジェリアのポップスのメイン・ステージがアフロビーツに取って代わられたいま、
ジュジュやフジは、もはや出る幕がないというくらい後退してしまいましたけれど、
フェミ・ソーラーのジュジュだけが、かろうじて踏みとどまっているという感じ。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-06-21
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-05-28
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2014-12-17
というのも、フェミ・ソーラーのジュジュは、過去のサウンドの焼き直しに終わらず、
自分たちのサウンドをしっかりと磨き上げていることが、きちんと伝わってくるからです。
ジュジュやフジが停滞・凋落したのは、
こうした音楽面の更新を怠ってきたからに、ほかなりません。
おんぼろシンセとへなへなサックスで、いつまでもお茶を濁してるようじゃ、
どんな熱心なファンも離れますって。
ジュジュは、80年代にキング・サニー・アデが世界の舞台へと躍り出たのが頂点で、
その後90年代はフジの人気に押され、サー・シナ・ピーターズがアフロ・ジュジュで
フジになんとか対抗していたものの、00年代に入ると、
フジがジュジュのサウンドを完全にかすめとって、ジュジュは失速していきました。
ゴスペル・ジュジュのフェミ・ソーラーの登場によって、ようやく10年代に入って
ジュジュを盛り返すことができたのです。
もっともこういう見方は、ぼくのような外国人の見方で、
現地では、00年代にインカ・アイェフェレのゴスペル・ジュジュが
爆発的な人気を呼びました。
しかしそのサウンドは、シンセを安易に頼ったことにより、
ギター・ミュージックであるジュジュの魅力を損ない、
トーキング・ドラムを中心とするパーカッション・アンサンブルの弱体化もあいまって、
音楽的な成果はまったくみられませんでした。
しかし、フェミ・ソーラーはパーカッション・アンサンブルを強化して、
キング・サニー・アデやエベネザー・オベイが活躍した
80年代のリッチなギター・サウンドと、
サー・シナ・ピーターズの90年代のアフロ・ジュジュのスピード感を両立させた、
バンド・サウンドを作り上げました。
キーボードやサックスも、ギター・アンサンブルを補完するアレンジで使い、
けっして自由気ままにソロを取らせたりなどしないところが、エラい。
ジュジュがギター・ミュージックであるという基本を揺るがせないよう、
ちゃんと手綱を締めていたんですね。
タイトル曲‘Highrise’ で聞かれる3台のギターの絡みを聞いていると、
1台がリズム・カッティング、2台が単弦リフを弾いていて、
うち1台は従来のジュジュのフレーズではなく、スークースのフレーズを弾いているのが、
すごく耳新しく響きます。こういう工夫をしているのが、フェミ・ソーラーのバンド、
サンシャイン・ジャサ・バンドの良さですよ。
ラスト・トラックの‘Oba Jasa’ では、
人気ラッパーの9ice をフィーチャーしてアフロビーツに挑戦。
パーカッション・アンサンブルは不在にもかかわらず、メロディがジュジュ・マナーだから、
ジュジュ・アフロビーツといった仕上がりとなっていて、違和感なく楽しめます。
アフロビーツにも柔軟に対応できるなんて、頼もしい限りじゃないですか。
全6曲70分超えの、満足度100%のアルバムです。
本作は昨年4月に出たもので、
現地ではすでに先月(3月)、新作“SPOT ON” が出ています。
ジュジュを再起動させたフェミ・ソーラーの活躍に、目が離せません。
Femi Solar "HIGHRISE" FS7 Music no number (2020)