アフリカン・ディアスポラのジャズ・ヴォーカリスト ソーミ
新世代ジャズ・ヴォーカリストと呼ばれる人は大勢いますけれど、 ソーミは、そうしたシンガーのなかで、ぼくがひいきにしている一人。 ルワンダ人の父とウガンダ人の母の娘としてイリノイに生まれ、 3歳の時にWHOに務める父親の仕事の関係でザンビアに暮らし、 帰国してイリノイ大学を卒業後、人類学の研究員としてケニヤとタンザニアを訪れ、 ニュー・ヨーク大学の名門校であるティシュ芸術大学院で修士号を取得。...
View Article出発点はセロニアス・モンク ダラー・ブランド
南ア・ジャズの巨匠であるピアニスト、 ダラー・ブランド(アブドゥラー・イブラヒム)のデビュー作が、 初のオリジナル・ジャケット仕様でアナログ・リイシューされました。 リイシューしたのは、イタリアのLP復刻専門レーベルのハニー・パイ。 CDでは、すでに5年前にスペインのフォノが、 ザ・ジャズ・エピスルズとの2イン1でリイシューしましたが、 その時は記事にしなかったので、書き残しておきましょう。...
View Articleチタリン・サーキットの帝王 ビート・フリッパ
こりゃあ、ゴージャスだ。 インディ・サザン・ソウル・シーンの名プロデューサー、ビート・フリッパの仕事を集大成。 なんと一挙27曲をディスク2枚に詰め込んだ、 チタリン・ベスト作というべき内容のアルバムです。 ベスト・プロデューサーの意を汲んだタイトルが誇張でないことは、聴けば歴然。 27曲すべて珠玉と呼びたいほど、選りすぐりの逸品揃いで、...
View Article再開したエチオピアのオンライン・ショップから届いたCD メセル・ファンタフン
COVID-19禍の影響か、エチオピアのオンライン・ショップが開店休業になってしまって 困っていたんですけれど、ようやく再開したようで、良かった、良かった。 さっそく新たにラインアップされた4アイテムを入手しました。 まずはじめに紹介するのは、オムニバスで見かけたことはあるけれど、 ソロ・アルバムは初めて手にした、エチオピアの伝統派シンガー、 メセル・ファンタフンの新作です。...
View Articleエチオ・ヒップ・ホップの記念碑 リジ・ミケル・ファフ
エチオ・ヒップ・ホップ・シーンを牽引するラッパー、 リジ・ミケル・ファフ待望の新作が、6年ぶりに届きました。 15年のデビュー作“ZARE YIHUN NEGE” はエチオピアで大ヒットを呼び、 ヒップ・ホップ・アルバムでこれほど幅広い層に受け入れられたのは、 エチオピア初という評判が伝わってきています。 その評判がよくわかるのは、全曲メロディアスで、...
View Articleぬくもりを伝えて グレッチェン・パーラト
なんて温かな声なんでしょうか。 人と人とが触れ合えなくなってしまったいま、 誰もが渇きや飢えを覚えている、肌のぬくもりや体温を、 グレッチェン・パーラトが音楽を通して伝えてくれている。 そんなことを実感させられる、素晴らしい新作です。 スタジオ録音は10年ぶりという、グレッチェン・パーラトの新作。 ぼくは13年のライヴ盤で初めてグレッチェンを知り、...
View Article南ア・エレクトロ・ポップの実験場 スポーク・マタンボ
南ア電子音楽の才人、スポーク・マタンボのデビュー作“MSHINI WAM” の衝撃は、 いまも忘れられません。 いまだから正直に告白しますけれど、 『ポップ・アフリカ800』の選盤にあたってすごく悩んで、結局選ばなかったのも、 本作のクオリティの問題では全然なくって、選者であるぼくの方が、 この音楽を語るヴォキャブラリーを持ち合わせていないからなのでした。...
View Articleマスカンダ一人多重録音アルバム ヴカジタテ
スポーク・マタンボがフックアップした新人のデビュー作。 これがヒップ・ホップとも、ハウスとも、エレクトロともまったく無縁の、 なんとマスカンダの音楽家なんだから、ビックリです。 マスカンダはズールーの吟遊詩人(ミンストレル)が伝えてきたズールー・フォーク。 バキバキに尖ったエレクトロを制作するプロデューサーの視界に、 マスカンダなんて音楽が入っていること自体、オドロキなんですけれど、...
View Articleコサ語使いのストーリーテラー ラリボーイ
もう一人、スポーク・マタンボがフックアップしたのは、 コサ語で「田舎の少年」を意味するラリボーイなるラッパー。 ラリボーイことシフォセンコシ・ンコドワネは、 コサ人の劇作家・小説家として著名なW・K・タムサンカ(1928-1998)の曾孫で、 曾祖父が残した芸術的遺産から多くのインスプレーションを得て、 自身のアイデンティティであるコサ語のラップ表現をクリエイトしたラッパーです。...
View Articleアマピアノ、ついに登場 テノ・アフリカ
南アの新しいエレクトロニック・ミュージック、 アマピアノがフィジカルになるのって、これが初なんでは? これまで南アのプラットフォームからダウンロードするほか、 音源を入手できませんでしたけど、 オウサム・テープス・フロム・アフリカが世界に向けてリリースするとは、想定外でした。 南アのアンダーグラウンド・シーンからゴムに続いて登場した、アマピアノ。 ゴムはダーバンで生まれましたが、...
View Article垂直系ピアノの逸品 ハサーン・イブン・アリ
レゾナンス・レコーズを筆頭に、ジャズの未発表音源の発掘が 盛んになっていますけれど、どうもぼく好みの人が登場してくれないんですよねえ。 まあ、シュミが偏っているのは自他とも認めるところなので、いかんともしがたいんですが。 でも、たまには天からの贈り物が届けられることもあるのです。 それがこの、ハサーン・イブン・アリ。 マックス・ローチに認められ、...
View Article深淵なるア・カペラ・ゴスペル
超弩級のゴスペルのコンピレーションが立て続けにリリースって、 どういうシンクロニシティなんでしょうか。 サヴォイのゴスペルに、スタックスのゴスペル専門レーベル、ザ・ゴスペル・トゥルースと、 選曲・解説ともこれ以上の編集はないというくらいの素晴らしさなんですけれど、 このア・カペラ・ゴスペル集にはトドメを刺されました。 ゴスペルの魅力をもっともストレイトに伝えるのが、ア・カペラであることは、...
View ArticleCOVID-19禍に負けるな リトル・ジョニー・リベーロ
久しぶりに聴くサルサ新作。 データベースに打ち込んでいて気付いたんですけど、最後に買ったサルサの新作が、 エディ・パルミエリの18年作“FULL CIRCLE” なんだから、ヒドいもんだ。 19年・20年ともに、1枚の新作も買っていなかったのかあ。 旧作にちょくちょく手を伸ばしていたから、 サルサとそんなに縁遠くしていたつもりはないんだけど、 近年不作だったってことは、明々白々でありますね。...
View Article2020年代のブラック・ミュージック絵巻 ジョン・バティステ
R&Bシンガーの新人?と店頭でなにげなく試聴して、衝撃が走りました。 すぐさまレジへ直行し、家であらためてじっくり聴いて、その才能にたまげましたねー。 ゴスペル、R&B、ニュー・オーリンズ・ソウル、ヒップ・ホップを横断して、 クオリティの高いエンターテインメント作品に仕上げる一方、 ブラック・ライヴズ・マターのメッセージを、くっきりと刻印しているじゃないですか。...
View Articleジュジュ再起動 フェミ・ソーラー
フェミ・ソーラーの絶好調が止まりません。やっぱ並外れてますね、この人は。 ナイジェリアのポップスのメイン・ステージがアフロビーツに取って代わられたいま、 ジュジュやフジは、もはや出る幕がないというくらい後退してしまいましたけれど、 フェミ・ソーラーのジュジュだけが、かろうじて踏みとどまっているという感じ。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-06-21...
View Articleウルトラ・モダンなアラブ歌謡 アビル・ネフメ&マルセル・ハリーフェ
ジュリア・ブトロスにヒバ・タワジと、正調アラブ歌謡の復権が著しいレバノンから、 またもゴージャスなアルバムの登場です。 ジャケットに、親子ほど年の離れた男女が写っていますが、 女性は80年生まれの歌手、アビル・ネフメ、 男性は50年生まれの作曲家、マルセル・ハリーフェ。 マルセル・ハリーフェは、本作でアラブの著名な詩人の詩に曲を付けていて、...
View Articleキューバ最高のファンク・バンド登場 トケス・デル・リオ
うわー、カッコいいーーーーーーー! なんだ、こいつら!! キューバのファロファ・カリオカだあ~~~!!! オープニングのファンク・チューンに、思わず叫んじゃいましたよ。 いやぁ、この快感、なん十年ぶりだろか。カラダが震えましたよ。 まさしくファロファ・カリオカと出会った時の衝撃以来。ファロファ・カリオカは、 95年にガブリエラ・モウラがセウ・ジョルジらとともに結成した、...
View Articleポップなジャズ・クバーナ ハニオ・アブレウ&アイレ・デ・コンシエルト
こちらはキューバン・ジャズ。これまた19年作という遅れた入荷。 ラテン・ジャズとあまり相性が良くない当方ですけれど、 84年ハバナ生まれのこの若手マルチ木管楽器奏者には、ピンとくるものがありました。 冒頭から、軽快なテーマを吹くバス・クラリネットの速いパッセージに引き付けられます。 途中からもう1本のクラリネットと重ね録りした二重奏になって快調に飛ばし、...
View Articleコソボのダンス・ポップ エドナ・ラロシ
コソボのシンガーを聴くのは、初めてですねえ。 かの地では大スターのようですよ。 ウィキペディアのページがちゃんとあって、 79年コソボの首都プリシュティナ生まれ。 アルバニア語で書かれているところは、どうやらアルバニア系のよう。 アルバニアといえば、以前ポニーを取り上げましたけれど、 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-10-04...
View Article現行最高のダンドゥット・シンガー リア・アメリア
すんごい歌のウマい人と、ずいぶん昔に感嘆した覚えのあるリア・アメリア。 そのきっかけはポップ・ミナンのアルバムでしたけれど、 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-12-28 その名前もすっかり忘れかけていたところ、リアのダンドゥット・アルバムを入手しました。 もともとリアはダンドゥット歌手だったらしく、むしろジャカルタ出身のリアが、...
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