超弩級のゴスペルのコンピレーションが立て続けにリリースって、
どういうシンクロニシティなんでしょうか。
サヴォイのゴスペルに、スタックスのゴスペル専門レーベル、ザ・ゴスペル・トゥルースと、
選曲・解説ともこれ以上の編集はないというくらいの素晴らしさなんですけれど、
このア・カペラ・ゴスペル集にはトドメを刺されました。
ゴスペルの魅力をもっともストレイトに伝えるのが、ア・カペラであることは、
異論のないところだと思いますけれど、ア・カペラ・ゴスペルといっても、
これほど豊かな世界があるということを、とことん味あわせる3枚組ですね。
クワイア、カルテット、シンガーズというスタイルの違いにとどまらず、
リード・シンガーの激しいシャウトばかりが売り物というわけではけっしてなく、
コーラスのアレンジで聞かせるグループありで、
そのヴァラエティ豊かな個性に圧倒されました。
ア・カペラ・ゴスペルというと、ついついハード・カルテットのシャウターばかり
注目しがちですけれど、ナイチンゲールズやピルグリム・トラヴェラーズなんて、
テイク6のハーモニーを、すでに40~50年代にやっていたんじゃないか!とびっくり。
こういう深いテクニックをじっくり聞かされると、ア・カペラの奥深さに感じ入りますねえ。
ソウル・スターラーズのような大物から、まったく聞いたことのない名前まで、
有名無名問わず、57組84曲を3枚のディスクに収録。
このコンピレがユニークなのは、アーティスト名をアルファベット順に並べた曲順。
ここまで割り切った並びのコンピレって、初めての経験ですけれど、
まるで研究用ファイルのような味気無さになるかと思いきや、
アーティストごとの個性を知るには、これ、もってこいの編集じゃないですか。
スタイルごとや録音順に並べると、アーティストの個性がぼやけてしまい、
アーティストをまとめて聴くために、ディスクのあちこちを飛び飛びで聴くという
面倒な作業をすることも、コンピレではしばしば起こるので、
こういう編集は「あり」ですよねえ。
それにしても、カルテットの伝統に遺されたブルージェイ・シンガーズの存在感は、
本当にデカかったんだなあと、良く分かりました。
数々の無名カルテットに、重厚なバーミングハム・カルテットの伝統が生きていて、
ア・カペラの完成度を磨き上げていたことが実感できる、珠玉の3枚組です。
v.a. "A CAPELLA BLACK GOSPEL: LOOK HOW THE WORLD HAS MADE A CHANGE 1940-1969"
Narroway PN1605/1606/1607