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初冬にブラジリアン・ジャズ・ヴォーカル マルチーナ・マラナ

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Martina Marana  EU TOCO MAL.jpg

ブラジルのジャズ系シンガー・シングライター、マルチーナ・マラナの新作。
といっても、2年も前に出ていたアルバムですね。
14年のデビュー作では、マルチーナが即興を師事したアンドレ・マルケスの
アヴァンギャルドなホーン・アレンジによって、
シンフォニックなサウンドを聞かせていましたが、
本作はクァルテート・BRSが伴奏を務め、フルート、フリューゲルホーン、
アコーディオンほかのゲストが、曲により加わります。

デビュー作はアンドレ・マルケスの色が強すぎて、
マルチーナの個性が埋没していた感があったので、
こちらがマルチーナ本来の持ち味を発揮した作品といえそうです。
前作は、エドゥアルド・グジンやラファエル・マルチーニといった、
ひと癖もふた癖もある作曲家たちの作品が並んでいましたが、
今作はすべてマルチーナの自作曲。

ヒネったアレンジなどは特にみられず、
ジャジーにまとめた軽快なMPBという装いの、爽やかなアルバムです。
マルチーナが弾くナイロン弦ギターに寄り添うのは、
マルクス・テイシェイラのジャズ・ギター。
ゼリア・ダンカンやガル・コスタに、イリアーヌ・イリアスなど、
数多くの女性歌手の伴奏で名を上げた人ですね。
それにしてもマルクスって、女性歌手のバックばっかりやってるな。

前作の才気に富んだアレンジを好んだ人には、本作は生ぬるいだろうな。
リラクシン・タイムに合う、落ち着いたまろやかなサウンドとなっています。
フィロー・マシャードの楽想に着想を得たと思われる‘Filó’ では、
そのフィロー・マシャードをゲストに迎えています。
フィローのヴォイス・パフォーマンスはさすがだなあ。
マルチーナもスキャットを披露しているんですけれど、
フィローのテクニックには到底及ばず、ちょっとムリしすぎ。

世界のあちこちから登場する新世代のジャズ・ヴォーカリストとは違い、
旧来型タイプのシンガーではありますが、
リカ・セカートとか好きな人なら、ハマるんじゃないかな。
初冬の空の青さに良く似合う好盤です。

Martina Marana "EU TOCO MAL" no label no number (2019)

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