ひさしぶりに、グッとくるブルース・シンガーに出会いました。
ダイユーナ・グリーンリーフ。57年ヒューストン生まれという、
ぼくの一つ年上のブルース・レディであります。
ソウル、ゴスペル色の強いブルーズン・ソウルを歌っているんですけれど、
力のあるヴォーカルには円熟味があって、感じ入っちゃいましたよ。
シャウトをしても無理がなく、内から湧きあがるソウルフルな衝動が
素直に伝わってきて、胸をすきます。
西海岸ブルース・シーンの立役者キッド・アンダーセンのプロデュースで、
もちろんギタリストとしても演奏に参加しています。バックが豪華で、
ジェリー・ジェモットがベースを弾いているのには、涙目になっちゃいました。
最初そうとは知らずに聴いていて、スゲエなこのグイノリ・ベース、誰?と
クレジットをチェックして、目が点になりましたよ。
いまも現役バリバリなんですね、ジェリー・ジェモットって。
ドライヴ感がハンパなくって、衰えを知らないベース・プレイにシビれました。
ほかにも、サックス・ゴードンのホンク・テナーが吠えまくり、
70年代を思わすホーン・セクションもばっちりキマっています。
ダイユーナは両親がゴスペル歌手で、幼い頃から歌ってはいたものの、
プロのシンガーとなったのは40過ぎというのだから、遅咲きの人ですね。
レコーディング・アーティストになるつもりはなかったらしく、
04年になってようやくアルバム・デビュー。
11年ぶりとなる本作は、5作目になります。
オープニングは、ココ・テイラーの‘Never Trust A Man’ のカヴァー。
グっとソウル寄りのサウンドで、ファンキー味たっぷりに仕上げています。
マイナー・ブルースの‘If It Wasn't For The Blues’ は、
アルバート・キングの‘I’ll Play The Blues for You’ を思わす曲で、
こういう曲には、グルーヴ感たっぷりのジェリー・ジェモットのベースがどハマリ。
キッド・アンダーセンも、切れ味鋭いギター・ソロを聞かせています。
ニーナ・シモンの有名曲‘I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free’ の
カヴァーも鮮やかなら、スウィング感たっぷりの自作曲ブルース、
カントリー・バラードの‘When I Call Your Name’、
クラシック・ゴスペルの‘I Know I've Been Changed’ など、
多彩なレパートリーを表情豊かに歌いこなしています。
正直なところ、女性ブルース・シンガーは歌い口が苦手な人も多いんだけれど、
ダイユーナは抵抗をおぼえるところが皆無。
つーか、こんなクリーンな歌い口の女性ブルース・シンガーも珍しい。
ぼくには最高の女性ブルース・シンガーです。
Diunna Greenleaf "I AIN’T PLAYIN’" Little Village LVF1045 (2022)