『アジア都市音楽ディスクガイド』掲載ディスク第2弾。
手元に届いたら、たった3曲しか入っていないEPで、ちょっと肩透かしでしたけれど、
デジパックのマンガの雰囲気がすごく良くて、気に入りました。
裏ジャケットの絵と、CDレーベルもシャレているので、一緒に載せておきますね。
薛詒丹(ダン・シュエ)は、台湾南部、高雄出身のジャズ・ヴォーカリストで、
19年に出した本作が初アルバム(EPだけど)。
本作は、ソロ・アクトのシンガー・ソングライターとして、
新たなキャリアを踏み出した一作だったようで、
すでに実績十分の実力ある歌手だったんですね。
学生時代にア・カペラ・グループ、モーメント・シンガーズを結成して、
多くのコンテストで受賞を勝ち取り、プロのア・カペラ・グループ、
O-Kai Singers に引き抜かれ、台湾および世界16カ国で
250本に及ぶツアーを経験しています。
その後も、有名歌手のバック・コーラスやア・カペラの指導をしていて、
15年から、ジャズ・ヴォーカリストとしてライヴ活動を始めたとのこと。
なんと17年には、ベーシストの安ヵ川大樹トリオをバックに、日本ツアーも
していたんですね。そのときは、ターニャ(薛詒丹)と名乗っていたようです。
ジャケットそのままのナイト・ムード溢れるアルバムで、
低めの落ち着きのある声で歌う、アダルトなジャジー・ポップ。
1曲目の「糖衣」では、浮遊するシンセとワウの利いたギターが、
ビターな都会の夜を演出します。
2曲目の「回來」は、蒼い水中を潜水するかのようなシンセの幽玄なサウンドに導かれ、
アクースティック・ピアノが限られた音数で、
美しい響きをぽつりぽつりと置いていくのが印象的。
クレジットを見たら、このピアノを弾いているのは、
台湾の新世代ジャズを代表する女性ピアニスト、許郁瑛(ユーイン・シュー)ですよ。
3曲目のタイトル曲「太安靜」は軽快にハネるドラムスのビートが心地良い、
まさしくシティ・ポップといえる一曲。ギターがサウンドにぴったりと合った
職人芸的プレイを聞かせてくれます。
YouTube には新曲「南門路上」もあがっていて、これまたメロウないい曲。
フル・アルバムが待ち遠しいですね。
薛詒丹 「太安靜」 好有感覺音樂 DH1901 (2019)