おお、吹っ切れたなあ。
前作の“ANIMALIA” を聴いた時、大きくうねるリズムの上で、
サックスが雄大に歌う曲が何曲かあって、気に入っていたんですよ。
全編こんな感じでやってくれたら、良かったのにと思っていたんだけれど、
新作はまさに、そんな期待通りの仕上がりとなっていますよ。
マンチェスターのインディ・レーベル、ゴンドワナが送り出したママル・ハンズの新作。
ゴンドワナからはひと足先にゴーゴー・ペンギンが人気を博しましたけれど、
ぼくはゴーゴー・ペンギンより、ママル・ハンズの方を買っています。
ゴーゴー・ペンギンのミニマルな人力ドラムン・ベースは、ちょっと物足りないもんで。
ゴーゴー・ペンギンはピアノ・トリオですが、
ママル・ハンズはベースレスで、サックス、ピアノ、ドラムスのトリオ。
どちらも耽美さに淫するところがあって、そこがまだるっこしく感じるんですが、
新作はそこを抜け出して、もっと明快にやり切った感があって、気に入りました。
なんかこういう明快さって、日本のフォックス・キャプチャー・プランにも似てますね。
ポスト・ロックとクラブ・ジャズを折衷させたフォックス・キャプチャー・プランのサウンドと
ママル・ハンズの音楽性は、同時代的に共振するものを感じます。
どちらのバンドも黒っぽい要素がまるでなく、白人音楽の極北みたいな音楽性で、
アルペジオだらけなクラシック・ピアノのフレージングが目立ちます。
あと、少女趣味な曲調というか、やたらとセンチメンタルなメロディも、よく似てるよなあ。
スウェーデンのエスビョルン・スヴェンソンを継ぐ人たちが、大勢現れてきたってことかな。
ママル・ハンズは、大きく歌う重厚なサックスの音色が、
演奏をきれいごとに終わらせず、ナマナマしい表情を生み出しているところがハナマル。
ライヒとかの現代音楽の方に振り子を向かわせるより、
こういう爽やかなポスト・ロックに向かってくれる方が、好みです。
Mammal Hands "FLOA" Gondwana GONDCD014 (2016)