え? フェイルーズの伝記映画? そんなものがあるの?
98年にフランスで公開された映画だそうで、ぜんぜん知りませんでしたねえ。
監督はフレデリック・ミッテラン。
ミッテラン元大統領の甥で、現在は自身も政治家になった人ですね。
05年にフランスでDVD化されていたことが、あとになって調べてわかりました。
今回ぼくが入手したのは、07年にEMIミュージック・アラビアが出したUAE盤DVD。
フランス盤DVDはPALなので、日本の通常のプレイヤーでは観れませんが、
UAE盤はNTSCのオール・リージョンなので、オッケーです。
それにしても、フェイルーズの伝記物語だなんて、
評判になったってよさそうなものだけど、
そんな映画があったなんて、話題にのぼったこともなかったですよねえ。
フェイルーズにちなんだ映画といえば、
『愛しきベイルート アラブの歌姫』が日本でも公開されましたけど、
あの映画は、フェイルーズを愛したベイルートの人々の物語で、
フェイルーズ本人はぜんぜん登場せず、あてが外れてしまって、
すごくがっかりしたのを覚えています。
確か、最後に、コンサート・シーンがちょっと出てくるだけだったよねえ。
フェイルーズ・ファンとしては、大いに不満が残るものだったので、
このDVDをカタログで見つけた時も、あの映画かと思ったんですけれど、
あちらは03年のオランダ映画なので、別物とわかってオーダーしたんでした。
いやあ、びっくりしました。
のっけからフェイルーズ本人が登場して、インタヴューに答えながら、
人生を振り返るというドキュメンタリーもの。
フェイルーズが出演した映画、テレビ番組、コンサートから、
フェイルーズの歌うシーンが次から次へと登場するので、
もう画面にくぎ付けになりっぱなし。
20~30代の頃の貴重なフィルムが、ふんだんに盛り込まれているんですけれど、
若いフェイルーズの美しいことといったら。
小学校の教室で子供たちと歌を歌う教師に扮したり、
結婚式でお祝いの歌を歌うなど、初めて観るものばかりで、
カラー映像の美しさにも、もうクラクラ。
若いフェイルーズは、ういういしさというより、
気品のある立ち振る舞いに、圧倒されます。
たたずまいが高貴で、もう存在感からして違いますね。本物の<お姫さま>です。
歌もクリスタル・グラスの如く繊細で、
完成されたコブシ回しの技量に、惹き込まれます。
あらためて、若い頃から歌声がちっとも変化していないのが、よくわかりました。
意外だったのは、インタヴューに答える地声がすごく低いこと。
歌と全然違うのに、驚かされました。
全編122分。英・仏語字幕。本編だけでも貴重な映像の連続ですけれど、
ボーナス・トラックとして、ヴィデオ・クリップが5曲付いています。
映画本編では、抜粋の歌のシーンを、完奏ヴァージョンで観れるので、
フェイルーズ・ファン必見のDVDといっていいでしょう。
[DVD] Dir: Frédéric Mitterrand "FAIROUZ"
Arte Video/EMI Muisc Arabia 0946 394610 97 (1998)