こんな人がいたなんて。
『ミュージック・マガジン』8月号の特集記事「越境するギタリストたち」で、
初めてその名を知ったメアリー・ハルヴァーソン。
エリック・ドルフィーが今の時代に生まれ変わって、もしギターを弾いたら、
きっとこんなプレイをするんじゃないかと思わせるような、
独自の語法を持っている人で、その個性は際立っています。
ブルックリンを拠点に活動している人だそうで、
現在所属するファイアーハウス・12のレーベル・メイトでもある
アンソニー・ブラクストンやイングリッド・ラブロックとも共演歴があります。
クリアなギター・トーンを特徴としていて、
エフェクトに頼らず、ギター一丁で勝負する潔さが男前じゃないですか。
いちおうフリー系のギタリストとして括られる人だとは思うんですけれど、
彼女が演奏しているのは、フリー・ジャズじゃありませんね。
一聴して、ドルフィーを思い浮かべたように、
チャーリー・パーカーからの伝統を継いだ、
正統的なジャズの語法を持つ人だと思いますよ。
正統的とはいえ、その独自の音楽セオリーによるアブストラクトな語法は、
ドルフィー・クラスのジャズに相通じるんだから、スゴイ才能の持ち主ですよ。
パーカー~ドルフィー派のぼくにとって、これほど好みのプレイヤーはありません。
すっかり舞い上がっちゃいましたよ。
トランペット、アルト・サックス、テナー・サックス、トロンボーンの4管に、
ペダル・スティール・ギター、ベース、ドラムスのオクテット編成の本作は、
メアリーのギター・プレイばかりでなく、楽曲がすばらしくて、
コンポジションの才能も並外れています。
こちらは、カーラ・ブレイやヘンリー・スレッギル級ですよ。
穏やかな曲調が多いんですが、整合感のある穏やかさの中で、
メロディが逸脱して狂っていくようなところが、たまんないんです。
いや、もう、まいっちゃったな。
びっくりして、ファイアーハウス・12のサイトから、メアリーの過去作を聞いてみたら、
これがまた、全部いいんですね、ホントに。
こりゃあ、もうまとめて買うしかないだろう、と舞い上がったんですが、
なんだか冷静さを失ってるような気もするので、
一晩寝て、もう一度試聴することにしました。
で、翌日再トライしたわけなんですが、結果は同じ。
えぇ~い、ままよとばかり、一気に5作をまとめてオーダーしちゃいました。
こんな惚れ込み方をする音楽家と出会えるなんて、
人生、そうそうあるこっちゃない。
いや~、なんか嬉しいなあ。
こういう出会いがあるから、音楽を聴く喜びがあるっていうもんですよね。
ご本人の写真を見ると、知的な文学少女といった風貌の眼鏡女子で、
なんか、すごく意外なんですけど。
ギルドのフル・ボディのギターを抱えている姿は、
ジャズ・ミュージシャンというより、学校の先生みたい。
ファンシーなアヴァン・ジャズ、圧倒支持します。
Mary Halvorson Octet "AWAY WITH YOU" Firehouse 12 FH12-04-01-024 (2016)