こりゃまたスゴイ才能が、ナイジェリアから出てきたなあ。
洗練されたサウンドは、ジャジーでポップ。
そのくせメロディは、めちゃくちゃヨルバ臭いという、得難い個性。
ヨルバ版ラウル・ミドンといったら、一番わかりやすいかな。
本格的なジャズ・ギターも聞かせる才人なのであります。
12年のデビュー作を聴いて、こんな人がいたとは仰天。ずっと気付かず、ごめんなさい。
去年ティワ・サヴェイジとダレイにやられて、
ヨルバ音楽の未来は、もうジュジュやフジなんかじゃなく、
ナイジャ・ポップこそにあると確信したばかりのところに、
アデデジを知って、その波は確実に大きくなってきたのを実感します。
といっても、ナイジャ・ポップにはR&Bやヒップホップの単なる焼き直しも多いので、
その中に、どれだけヨルバなりイボなりの民俗性を発揮しているかがポイント。
欧米でヒットしたから注目するとかじゃなくて、自分の耳で聞こうよ、みんな。
その意味でアデデジは、ティワ・サヴェイジやダレイ以上に、ヨルバ色濃厚。
“Night And Day” のメロディを借用した“Odun Ayabo” のセンスに脱帽です。
アメリカン・スタンダードのメロディと、ヨルバ独特のメロディが入り混じり、
英語とヨルバ語で入れ替わりで歌うという、面白いトラックです。
「ナイジャポップ」ならぬ“Naijazz” とキメた曲では、
ギター・ソロとユニゾンでスキャットするジョージ・ベンソンばりのプレイを披露。
アーバンなジャジー・ソウルの“Jojolo” では、
トーキング・ドラムをバックにコーラスのレスポンスがインタールードで差し挟まれたり、
リオーネル・エルケをフィーチャーしたハイライフ・ナンバーまでありますよ。
途中、コーラスとコール・アンド・レスポンスをするパートのメロディは、
ハイライフではなく、完全にジュジュですね。
今年になってリリースされた、2作目にあたる2枚組新作は、
デビュー作の取組みを、さらに深化させたものとなっています。
ディスク1は、トーキング・ドラムの乱打で始まる
エドゥマレ(全能の神オロドゥマレ)賛歌でスタート。
2曲目の“IBA” は、アクースティック・ギターを核に、トーキング・ドラムほかの
パーカッション・アンサンブルが活躍するオーガニックなサウンドのジュジュ。
編成こそ40年代の電化前のジュジュだけど、このセンスは新しい。
ニュー・ソウルを通過した若者ならではのセンスだね、まいったなあ。
“Iyawo Ori Aja” は、オーランド・ジュリウスをゲストに迎えた本格的なハイライフ。
トーキング・ドラムのドラム・ランゲージを、
カリンバで演奏するアイディアには、脱帽。こういうセンスに、この人の才能が光ります。
アフロ・ファンクの“If You Don't Like To Fink (IYDL2Funk)” では、ウルマーよろしく
♪Jazz is the teacher, funk is the preacher ♪ なんて歌ってます。
アルバム・ラストも、トーキング・ドラムを中心とする
パーカッション・アンサンブルをバックに歌うコール・アンド・レスポンスで、
クールに締めくくっています。
ディスク2の聴きどころは、4曲目の“Ija Ominira” でしょう。
アフロビートをジャズ化したようなアフロ・ファンク・ジャズで、
フェラ・クティのナレーションをコラージュし、
ギターを弾き倒しているアデデジのソロが白眉。
さらに5曲目“Felasophy” でも生前のフェラのインタヴューをバックに流しながら、
アデデジはオーソドックスなスタイルのジャズ・ギター・ソロを披露しています。
演奏力の高さ、アレンジの緻密さは、ナイジェリアのミュージシャン随一といえ、
これほどジャズ・センスのある人は、初めてじゃないですかね。
今すぐブルーノートで公演したって、ぜんぜん不思議じゃありません。
ロンドンとオランダのカレッジでジャズを学んだ経歴を持ち、
ジョージ・ベンソン、ウェス・モンゴメリー、チャーリー・パーカー、サニー・アデ、
フェラ・クティの影響を受けたという音楽性をそのままに発揮しているアデデジは、
ギリシャのアテネにも活動拠点を置き、
ヨーロッパとナイジェリアを行き来しながら、活動中です。
Adédèjì "ÀJÒ" no label no number (2012)
Adédèjì "AFREEKANISM" Dejafrique Music no number (2017)