アソウフが映す乾いた情感 ムドゥ・モクタール
珍しくサヘル・サウンズの新作が、CDリリースされました。 このレーベルはデジタル配信と限定アナログのリリースがメインで、 めったにフィジカルを出さないので、ひさしぶりです。 マリのトゥアレグ人バンド、アマナール以来じゃないかしらん。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-05-30 アマナールのCDはすでに入手不可能のようで、...
View Articleおばあちゃん子のヌーラ・ミント・セイマリ
この夏来日した、モーリタニアの女性グリオ、ヌーラ・ミント・セイマリに取材して、 ムーア音楽の旋法体系を、大づかみながら理解できたのは、大収穫でした。 これまでムーアのグリオの古典的名盤であるオコラ盤の解説や、 ポール・コラール/ユルゲン・エルスナー著『人間と音楽の歴史 北アフリカ』などで、 ムーア音楽の旋法の基礎知識はあったものの、...
View Articleジャジー・ヨルバ・ポップ アデデジ
こりゃまたスゴイ才能が、ナイジェリアから出てきたなあ。 洗練されたサウンドは、ジャジーでポップ。 そのくせメロディは、めちゃくちゃヨルバ臭いという、得難い個性。 ヨルバ版ラウル・ミドンといったら、一番わかりやすいかな。 本格的なジャズ・ギターも聞かせる才人なのであります。 12年のデビュー作を聴いて、こんな人がいたとは仰天。ずっと気付かず、ごめんなさい。...
View Articleペルーのソングライター アンドレス・ソト
去る7月7日に68歳でこの世を去った、 ペルーのヴェテラン・シンガー・ソングライター、アンドレス・ソトの14年作。 長くステージやレコーディングから離れていたため、 復帰作として歓迎されたアルバムだったにもかかわらず、 これが遺作となってしまったようです。 本作はアンドレス・ソトの代表曲“Negra Presuntuosa” “El Tamalito” “Quisiera Ser...
View Articleターボ・フォークの痛快作 ダーラ・ブバマラ
セルビア、ターボ・フォークの美人巨乳歌手、ターラ・ブバマラの新作。 しばらくアルバムが出ていませんでしたが、前線復帰作でしょうか。 毎度おなじみ、豊胸したバストを強調した写真が、ライナーにはたんまり。 セルビアの男どもを、さぞ喜ばせているんでしょうね。 76年生まれなので、すでに四十代ですか。 野性味たっぷり、艶やかさをあわせもつ姐御肌のエネルギッシュなヴォーカルは、...
View Articleアフリカン・ラップ最前線 ジョーイ・ル・ソルダ
ブルキナ・ファソがラップで盛り上がっているらしいというウワサを聞きつけ、 人気沸騰のアート・メロディはじめ、ブルキナベ・ラッパーの一人として、 ジョーイ・ル・ソルダをこの春初めて聴いたわけなんですが、 どうやらこの人の才能は、こちらの想像をはるかに超えていたようです。 ジャズ名盤のデザインを借用したアートワークが秀逸な14年作も、 アフリカン・ラップとして水準以上のアルバムでしたけれど、...
View Articleマリファナをキメて気持ちよくなるジュジュ J・O・アラバ
「12歳の時からコレクター」を豪語するフェミ・エショが社長を務める、 ナイジェリアのエヴァーグリーン・ミュージカル・カンパニー。 フェラ・クティの40枚組ボックスを筆頭に、ロイ・シカゴ、アデオル・アキンサニャ、 ヴィクター・オライヤ、アインデ・バカレ、E・T・メンサー、ブラック・ビーツなど、 ナイジェリアやガーナのレジェンドたちを、フェミ個人蔵の音源から、 続々ボックスCD化している会社です。...
View Articleキュートなマンデ・スウィング カンジャファ
ンゴニでジプシー・スウィングを演奏するという、 ユニークすぎるマリの若手音楽家、カンジャファのフル・アルバムがリリースされました。 昨年出たデビューEPで、この若き才能におったまげたんですが、 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-12-12 その後、カンジャファは若手天才プレイヤーとして、 マリで注目を集める存在であることを知りました。...
View Articleナス・エル・ギワンのフォロワー ナス・エル・ハル
うわあ、ナス・エル・ギワンのフォロワーかあ。 やっぱり、いるんだなあ、モロッコには。いや、いなけりゃ、オカシイよね。 すみません、いきなり。何の話だか、わかりませんね、これじゃ。 モロッコのマラケシュで86年に結成されたという、 ナス・エル・ハルのCDを聴いて、感じ入っちゃったもんで。 はじめに名前を出したナス・エル・ギワンは、60年代末にカサブランカで結成され、...
View Articleトゥアレグのガールズ・グループ レ・フィーユ・ド・イリガダッド
ムドゥ・モクタールに続くサヘル・サウンズの新作は、 「イリガダッドの女の子たち」を名乗るニジェールの女性3人組。 イリガダッドって、どこよと思って、グーグルさんに訊いてもわからず、 レーベルの説明によれば、ニジェール中央部のサハラ砂漠の縁にある、 小さな沼地の村とのこと。地図にも載っていない場所で、 もちろん電気も水道もない、トゥアレグの野営地なんでしょうね。...
View Articleトランプが来た夜のファド アンドレー・ヴァス
ファドの新世代歌手では、ジョアン・アメンドエイラのように、 伝統ファドのスタイルをしっかりと保っている歌い手が好きです。 ファドのように歴史の古い、きっちりとした型のある音楽は、 変にモダン化したり、他の音楽をミックスしても、 結局のところ、旧来のファドが持つ魅力以上のものを打ち出すのは、 難しいと思っているもんで、これって、フラメンコも同じですよね。...
View Articleポルトガルのカヴァキーニョ ジュリオ・ペレイラ
ブラジルのカヴァキーニョの起源は、 ポルトガル移民が持ち込んだブラギーニョだというのが通説になっていますけれど、 どうやらこの説は不正確というか、ちょっと問題ありだということを知りました。 特に「ブラギーニョ」という固有名詞を使うのが問題で、 単に「小型弦楽器」としておけば良かったようなんですけれども。 そんなことが、ポルトガルのトラジソンからリリースされた、...
View Article歌うドラムス エドゥ・リベイロ
渡辺貞夫のバンド・メンバーとして、先日来日していたエドゥ・リベイロの新作。 いまやサンパウロのジャズ・シーンで引っ張りだこのドラマーで、 ヤマンドゥ・コスタのバックで来日したこともありましたっけね。 あいかわらず貞夫さんの若手起用ぶりは、冴えてますねえ。 本作は、11年ぶりのリーダー作とのこと。 ペイパー・スリーヴ仕様のそっけない作りですけど、 中身は極上のブラジリアン・ジャズですよ。...
View Article優美な知性を彩る清涼な歌声 ヴァネッサ・モレーノ
なんて清涼な歌声。 ヴァネッサ・モレーノを聴いて、ジョイスの“FEMININA” を思い浮かべるのは、 ぼくばかりではないでしょう。 ジョイスと同じ声質を持つジアナ・ヴィスカルジの方が、 ジャズ・センスの強さといった点で、より共通項があるといえるかもしれません。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-09-25...
View Article蘇る南ア・ブラックネス バファナ・ンハラポ
初めてその名を聞く、南ア黒人歌手のデビュー作。 なんとノルウェイのジャズ・レーベル、ジャズランドからのリリースで、 プロデュースとミックスを、 ブッゲ・ヴェッセルトフトが手がけているというのだから、へえ~。 どんなアルバムになっているのやら、まったく想像もつかずに聴き始めたんですが、 これが予想だにせぬ、すばらしい仕上がり。...
View Articleコンテンポラリー・エチオ・ポップ良作 ヘレン・ベルヘ
あいかわらず、エチオピア現地盤のリリースは活発なんですけれども、 どうもここのところ、ぱっとした作品がないんですよね。 良かったのは、この春に出会ったジャズ・ギタリストのギルム・ギザウくらいかなあ。 エチオ・ジャズ新世代によるユニークな良作なんですけど、 日本に入ってこないのが残念です。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-03-04...
View Articleエチオピアン・ポップのリリース事情 エスバルウ・ユタイェウ・イェシ
エチオピアの男性歌手の新作で良かったのは、エスバルウ・ユタイェウ・イェシ。 85年生まれで、今年リリースした本作がデビュー・アルバムとのこと。 カラッと明るい、いい声の持ち主ですね。 伸びのあるソウルフルな歌いぶりがすがすがしく、好感が持てます。 やわらかに回るこぶしも、若々しくていいじゃないですか。 プロダクションは、エチオピアン・ポップの標準仕様とはいえ、...
View Article「マイ・ウェイ」新解釈 フェイルーズ
アラブ世界を代表する孤高の女性歌手、フェイルーズの新作。 正直、聴くのにためらいがなかったといえば、嘘になります。 思えば10年の前作“EH FI AMAL” の時点で、すでに75歳。 その年齢が信じられぬ官能に溢れた歌声が、奇跡的なアルバムでしたけれど、 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-12-18...
View Article音楽を引き立てる音響の快楽 細野晴臣
細野晴臣の新作が、とんでもない。 オープニングからして、スリム・ゲイラードの“Tutti Frutti” なんだから、 いきなりニヤニヤが止まりません。いかにも細野さんらしいカヴァーと思ったら、 ご本人曰く、レオ・ワトソンのヴァージョンを、最近知ったばかりというのだから、 意外や意外。スリム・アンド・スラムのオリジナルは聞いたことがないんだそう。...
View Articleエレクトロ・ソンガイ レイラ・ゴビ
お! 今度はフィジカルも出るのね。 インターナショナル・デビュー作として、 クレモント・ミュージックからリリースされたレイラ・ゴビの前作は、 500枚限定LPと配信のみのリリースでしたけれど、 セカンドはCDもリリースされるというインフォメーションに、楽しみにしていました。 レイラ・ゴビは、マリ東部メナカ出身の女性歌手。 これまでさまざまなマリの歌手のバックアップ・ヴォーカリストとして活動し、...
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