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マリファナをキメて気持ちよくなるジュジュ J・O・アラバ

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J.O. Araba.jpg

「12歳の時からコレクター」を豪語するフェミ・エショが社長を務める、
ナイジェリアのエヴァーグリーン・ミュージカル・カンパニー。
フェラ・クティの40枚組ボックスを筆頭に、ロイ・シカゴ、アデオル・アキンサニャ、
ヴィクター・オライヤ、アインデ・バカレ、E・T・メンサー、ブラック・ビーツなど、
ナイジェリアやガーナのレジェンドたちを、フェミ個人蔵の音源から、
続々ボックスCD化している会社です。

十年以上前に、知り合いのナイジェリア人から直接買い付けてもらって、
あらかたエヴァーグリーンのカタログは入手したものの、
その後のリリースで、入手しないままのものがいくつかあったんですね。
そのうち手に入れなきゃと思いながら、すっかり記憶の彼方になっていたんですが、
エル・スールの原田さんがまとめてエヴァーグリーンのカタログを発注するというので、
これ幸いとオーダーをお願いしました。
ボックスものは年末に入荷するということで、先に届いたのが、1枚もののJ・O・アラバ。

よほどナイジェリア音楽に詳しい人でないと、J・O・アラバを知る人はいないでしょうが
(オーダーしたのはぼくと深沢さんの二人だけだったらしく、
原田さんも、J・O・アラバ、誰それ?と思ってたとのこと)、
50~60年代に一風変わったジュジュのスタイルで人気を呼んだ重要人物なんですよ。

第二次世界大戦後のジュジュ・シーンというと、
電化によってアンサンブルが大型化したアインデ・バカレから、
I・K・ダイロ、トゥンデ・ナイチンゲールを経て、
エベネザー・オベイ、サニー・アデへと続くのが、
いわばジュジュの本流であったわけですけれど、
J・O・アラバは、そうした本流から外れたタイプのミュージシャンでした。
そんなJ・O・アラバに憧れたのが修行時代の若き日のフェラ・クティで、
クーラ・ロビトス時代には、“Araba's Delight” という曲を録音しているほどです。

50年代のジュジュといえば、トーキング・ドラムを中心とした打楽器アンサンブルに、
コーラスが導入されてコール・アンド・レスポンスをするなど、
ヨルバ化とモダン化が同時に進んだ時代でした。
しかし、J・O・アラバはそんな流行に背を向け、
雑食性溢れるパームワイン音楽の香りが残る、30年代のトゥンデ・キング時代の
少人数による、昔ながらのジュジュをリヴァイヴァルしたのでした。

J・O・アラバことジュリウス・オレドラ・アラバは、22年5月24日レゴス生まれ。
ライト級のボクサーとしてタイトルを獲り、「スピーディ」の異名を取ったあと、
ナイジェリア鉄道で技能工として働いていたところ、同僚で9つ年上の先輩の
ジョセフ・オランレワジュ・オイェシク(J・O・オイェシク)と出会い、
二人で「トイ・モーション」というスタイルのジュジュを作り出したのです。

トイ・モーションは、いわば労務者クラスのノスタルジーといえるもので、
当時のジュジュですでにデフォルトとなっていたトーキング・ドラムを使わず、
西洋式のパレード・ドラム(サイド・ドラム)やアギディボを取り入れた、
より庶民的で下町感覚に富んだジュジュでした。
トイとはマリファナの隠語で、要するに、
「マリファナをキメて、気持ちよくなる」という意味だったんですね。

J・O・オイェシクはレインボー・クインテット、
J・O・アラバはリズム・ブルースを率いて、
それぞれグッド・オールド・デイズなトイ・モーションを売り出していたところに、
ナイジェリア放送局の大物DJスティーヴ・ローズに認められ、
57年にフィリップスへのレコーディングを果たしました。

J・O・アラバ率いるリズム・ブルースには、アギディボにファタイ・ローリング・ダラー、
サイド・ドラムにオラセニ・テジュソが在籍していました。
ファタイ・ローリング・ダラーについては、以前ここで書いたことがありますが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-11-08
オラセニ(セニ)・テジュソは、J・O・アラバ時代のレパートリーを再演した初アルバムを
81歳でリリースして、ちょっとした話題になりました。

Seni Tejuoso.jpg

タイトル曲の“Easy Motion Tourist” は、セニのシグニチャー・ソングとなった代表曲で、
J・O・アラバが歌ったオリジナル・ヴァージョンは本作に収録されているほか、
ファタイ・ローリング・ダラーも復帰作の“RETURNS” で取り上げたほか、
キング・サニー・アデも98年の“ODÙ” でカヴァーしていました。

エヴァーグリーンが復刻した50代末から60年代初めの全盛期録音15曲
(クレジットは14曲のみで、あいかわらずのナイジェリア流のテキトー仕事)の中には、
マンドリンとカズーをフィーチャーしたJ・O・オイェシク名義録音の3曲も入っていて、
そのうちの1曲“Yabonsa” は、パームワイン古典の“Yaa Amponsah” のカヴァーです。

DVD Konkombe.jpg最後になりますが、
ナイジェリア音楽ドキュメンタリー
“KONKOMBE” で、晩年のJ・O・アラバを
観ることができるのをご存じでしょうか。
つい最近、“KONKOMBE” から抜粋された
フェラ・クティのリハーサル・シーンに、
「初めて見た」と興奮していた
往年のファンもいたくらいなので、
J・O・アラバのシーンなんて、
誰も記憶していないかもしれませんが、
かの名ヴィデオはDVD化もされたので、
ソフトが手元にある方は、ぜひ見直してみてください。

J. O. Araba
"WORKS OF THE LEGENDARY J.O. ARABA"
The Evergreen Musical Company no number
Seni Tejuoso "EASY MOTION TOURIST" Jazzhole JAH011CD (2010)
[DVD] King Sunny Ade, I.K. Dairo, J.O. Araba, Kokoro, Fela Anikulapo-Kuti, Lijadu Sisters, Area Scatter and others
"KONKOMBE : THE NIGERIAN POP MUSIC SCENE" Shanachie 1201

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