ンゴニでジプシー・スウィングを演奏するという、
ユニークすぎるマリの若手音楽家、カンジャファのフル・アルバムがリリースされました。
昨年出たデビューEPで、この若き才能におったまげたんですが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-12-12
その後、カンジャファは若手天才プレイヤーとして、
マリで注目を集める存在であることを知りました。
カンジャファは、多くのグリオを輩出するマリ西部カイのグリオ一門の出身。
カイといえばカソンケ人が多く暮らす地方なので、
カンジャファもカソンケなのかもしれません。
ただし、グリオとしての修養はカイではなく、マリの首都バマコで受けたようです。
グリオとして一本立ちしてからは、ソンガイ人歌手シディ・トゥーレに見出されて、
アメリカやヨーロッパ・ツアーに帯同し、アメリカやカナダではカントリー音楽に感化され、
フランスで出会ったジプシー・スウィングが、彼に決定的な影響を与えたようです。
以前から、海外の音楽に惹かれていたカンジャファは、
アラブ音楽やフラメンコなども勉強していて、好奇心旺盛だったんですね。
ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリに感化されたグリオなんて、
彼が初というか、アフリカ人の音楽家初なんじゃないかしらん。
デビューEPの2曲含む計14曲のこのアルバムでは、
ジプシー・スウィングばかりでなく、
アメリカのカントリーやアラブ音楽に影響されたトラックなど、
カンジャファが吸収してきた音楽性が素直に発揮されていて楽しめます。
「バンジョーのようにンゴニをプレイする」「ウードのようにンゴニをプレイする」と
副題の付いたトラックに聞かれるとおり、バセク・クヤテやマカン・トゥンカラたちが
切り拓いて来たンゴニの可能性を、
カンジャファもまた新たなアプローチで試みているんですね。
コード弾きはばんばんするし、ロックやブルースから借りてきたフレーズも披露するし、
アブ・シというンゴニ奏者とのンゴニ二重奏では、
あの手この手のテクニックを見せつけてくれますが、
そんなトリッキーなプレイでも、ぜんぜんイヤミな感じを与えないのは、
カンジャファが弾くンゴニのタッチに、<ゆるぎない美しさ>があるからです。
ンゴニをこれほどキリリと響かせるのは、ピッキング/フィンガリングの正確さ、
タッチの的確さの賜物で、そこが若き天才と呼ばれる由縁でしょうね。
そして、ぼくがなによりカンジャファを支持したいのは、
彼の音楽がキュートだからなのでした。
マンデ・ポップをこんなにカワイク♡演奏した人を、ぼくは他に知りません。
Kandiafa "MALI COUNTRY" Sans Commentaire SC04 (2017)