アフロ・ポップ・リイシュー・レーベルのニュー・カマー
ニュー・ヨークで新たに誕生したオスティナート・レコーズは要注目です。 カーボ・ヴェルデの70~80年代音源をコンパイルした “SYNTHESIZE THE SOUL: ASTRO-ATLANTIC HYPNOTICA FROM THE CAPE VERDE ISLANDS 1973-1988” は、 確かな審美眼をうかがわせる選曲で、 ずっと無視していたのを、深く後悔させられました。...
View Article爆撃から守られたソマリ音楽のアーカイヴ
「ソマリ音楽のアーカイヴは、ちゃんと保存されている」 昨年来日したソマリランドのサハラ・ハルガンが、 ぼくにきっぱりと語ってくれたことが、忘れられません。 ソマリアの国営ラジオ局ラジオ・モガディシュに残された、 3万5千リールに及ぶ膨大な録音のデジタル化作業が 進行中ということは耳にしていましたが、 それとは別に、ソマリア北西部に位置するソマリランドにも、...
View Articleトニー・アレンのビートに追い付いたジャズ
トニー・アレンがアート・ブレイキーのトリビュート盤EPを ブルー・ノートから出すという話を聞いた時は、 これは面白い企画を考えついたもんだなあと期待したんですが、 出来上がりは、予想に反し平凡な仕上がりで、ちょっと肩すかしでした。 トニー・アレンのドラミングは、古いハードバップ・スタイルまんまなところがあるので、 アート・ブレイキーをやるならバッチリと思ったわけなんですけど、...
View Articleアフリカと欧米の相互作用 ムサフィリ・ザウォーセ
ウィキペディアによれば、故フクウェ・ザウォーセの5番目の子供という、 82年生まれのムサフィリ・ザウォーセ。 90年12月にバガモヨのフクウェ・ザウォーセのお宅にうかがった時、 家にいっぱい子供たちがいたけど、あの中にムサフィリもいたんだろうか。 12月31日生まれというから、ちょうど8歳になる手前だったはず。 あんまり子供が多いので、「この子たちみんな、あなたの子供なの?」と聞いたら、...
View Articleポップ・マロヤに見るレユニオン史
インド洋レユニオン島で75年から86年に出されたシングル盤から、 マロヤのナンバーを選曲したコンピレーション。 サブ・タイトルに「エレクトリック・マロヤ」とあるように、 フランス人プロデューサーが海外向けに制作した伝統マロヤではなく、 現地のヒット・ソングとして聞かれていた、ポップ・ロック化したマロヤを集めているので、 ドス黒いパーカッション・ミュージックが苦手な人にも、...
View Articleバマー・ギターの生き証人 ウー・ティン
昨年のベスト・アルバムに、幻のビルマ・ギター(バマー・ギター)の名手、 ウー・ティンのアルバムを選ばなかったのは、泣く泣くだったんですよ。 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-08-06 演奏内容こそ、ベスト・アルバムとしてなんら不足はないものの、 井口寛プロデューサー個人の自主制作盤のため、一般に出回っていないことに加え、...
View Articleビルマ大衆歌謡の黄金時代 コー・アウンジー
先月、井口さんが出来立てほやほやのウー・ティンの新作CDを持って、 ヤンゴンのご自宅まで届けに行った際に見つけてきたというCD3枚。 井口さん、お土産、ありがとうございます。 コー・アウンジーという、初めて聞く名の男性歌手のアルバムで、 ベスト・アルバムが3タイトルも出ているほどなのだから、 相当有名な歌手なんだろうなということは、容易に想像がつきます。 井口さんによれば、最近亡くなったとのこと。...
View Articleリズムの偉才、爆発 ヴィジェイ・アイヤー
わ~お♪ こういうフォーマットで聴きたかったんですよ。 3管入りのセクステットとなったヴィジェイ・アイヤーの新作。 ずっとピアノ・トリオの作品が続いていて、 リズムの鬼ヴィジェイの凄みは、そこでも十分発揮されていたとはいえ、 もっと大きな編成で聴いてみたいと思っていたもんだから、願ったりかなったり。 どういうメンバーを集めたのかとクレジットをみれば、...
View Articleブラジルのコンテンポラリー・ジャズ最高峰のグループ ルデーリ
ルデーリの新作が出ました。 ルデーリは、バーデン・パウエルの息子フィリップ・バーデン・パウエルのピアノに、 ギリェルミ・リベイロのアルバムでもプレイしていたダニエル・ジ・パウラのドラムス、 http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06 ルビーニョ・アントゥネスのトランペット、ブルーノ・バルボーザのベースの4人組。...
View Article目が覚めるショーロ チアーゴ・ソウザ
うひゃー、このリズムのキレ! ボーっとしてた頭が、一瞬にしてシャキッと目が覚めました。 のっけからシャープなバンドリンに驚かされたのは、 エポカ・ジ・オウロのバンドリン奏者ロナルド・ド・バンドリンの息子 チアーゴ・ソウザのデビュー作です。 ジャケットに写る主役のルックスは優等生ぽく、ファッションもイケてないというか、 なんかいまひとつだなあと思いながら聴き始めたせいか、...
View Articleブラジル大衆歌謡歌手の矜持 カウビ・ペイショート
あの世に逝く前、最後にこんなふうに歌えたら、歌手人生も本望だろうなあ。 そんな思いを抱いた本作は、亡くなるわずかひと月前のレコーディングという、 カウビ・ペイショートの遺作です。 16年3月に本作のレコーディングを終え、 5月3日にリオでアンジェリア・マリアとステージで歌ったのを最後に、 そのわずか12日後の5月15日、肺炎で息を引き取ったというのだから、 急なことだったようですね。...
View Article小粋なキューバン・スウィング ボビー・カルカセース
こりゃあ、面白い。この人、どういう人なの? キューバのエンタテイナー歌手なんですか、へぇ、初めて知りました。 ブラジルのカウビ・ペイショートに続いて、 老練なヴェテラン歌謡歌手のアルバムを聞くというのも、なんだか奇遇ですねえ。 外交官の家に生まれたボビー・カルカセースは、38年キングストン生まれ。 一家はボビーが4歳の時にキューバに戻り、...
View Articleクインシー・ジョーンズの後継者 テラス・マーティン
9月はグレッチェン・パーラト、ムーンチャイルドとライヴ三昧だったんですが、 最後にテラス・マーティンで打ち止め。 ケンドリック・ラマーにスヌープ・ドッグのプロデューサーとして、 脚光を浴びまくっているテラス・マーティンですけれど、 アルバムの方はなんだかスムース・ジャズみたいで、 この人の本領は、ナマを観なければわからなさそう。...
View Articleセーシェルのアフロ・クレオール・ミュージック グレース・バルベ
拙著『ポップ・アフリカ800』の選盤で泣く泣く外したCDが、 最近エル・スールに入荷したのを、常連のお客さんのツイートで知りました。 ひさしぶりに目にしたもので、懐かしくなって、 CD棚からひっぱり出して聴き直したんですけど、う~ん、いいアルバムですねえ。 ああ、やっぱり入れたかったなあ。悔しさがまた込み上げてきます。 いい機会なので、ここで取り上げておこうかな。...
View Articleトーゴリーズ・ファンク降臨 トーゴ・オール・スターズ
うぉう、ボトムが利いてるねえ。 セヴンティーズを意識したオールド・スクールなサウンドなれど、 この重量感あるリズム、これぞアフリカン・ファンクの醍醐味じゃないですか。 オランダから届いた、トーゴ・オール・スターズを名乗るアルバム。 ミュージシャン14人に、アディショナル・ミュージシャン4人の名前が クレジットされていて、トーゴのロメで録音されています。...
View Articleアフロフューチャリズムの偉才 ピエール・クウェンダーズ
バロジ以来の逸材を発見しました。 85年、コンゴ民主共和国の首都キンシャサに生まれ、 16歳の時に母親とカナダへ移住した、 ピエール・クウェンダーズことジョゼ・ルイ・モダビ。 14年のデビュー作が、いきなりカナダ最大の音楽賞、ジュノー賞の ワールド・ミュージック最優秀アルバムにノミネートされたという才人です。 今回2作目となる新作リリースで、この人を初めて知り、...
View Articleギネアのサップなギタリスト モー!クヤテ
秀逸なジャケット写真が印象的だったモー!クヤテの前作。 フランスのファッション誌から飛び出してきたようなデザインに、 ウェスタナイズしたアフリカ人モデルといった風情で写っているものだから、 さぞやフランス人受けをねらったサウンドかと思いきや、 これが直球のマンデ・ポップで、そのフレッシュさに頬がゆるんだのでありました。 モー!クヤテは、77年、ギネアの首都コナクリ生まれ。...
View Articleブラジルのシャバダバ・コーラス エジガル・エ・オス・タイス
祝CD化。 ジスコベルタスがやってくれました。 ブラジリアン・スキャットの名盤として、 その筋のファンから絶賛されていた、ジャズ・ボサ・ヴォーカル・グループ、 エジガル・エ・オシ・タイスの70年RGE盤です。 ブラジルのレア・グルーヴとして、一時期とんでもない値段が付けられてましたけど、 今はそんな狂騒も過ぎ去って、落ち着いた頃でしょうか。...
View Article狂おしいレディ・ソウル ミズ・アイリーン・リネー
ここのところネオ・ソウルぽいサウンドを耳にすることが多くて、妙な気分。 だって、ネオ・ソウル華やかりし頃には、あんまり興味を持てなかったもんだから。 サウンドには惹かれても、歌いぶりとか、声そのものがどうも苦手な歌手が多くて、 世間では大絶賛のシンガーにまったく反応できず、ほとんど素通りしてきただけに、 なんで今頃と、我ながら思ってマス。 で、また出会ってしまった1枚。...
View Articleピアノ・トリオ+ビッグ・バンド フロネシス
今年のジャズはヴィジェイ・アイヤーでキマリと、勝手に認定してますけど、 それにしても、こんなにジャズが面白くなるなんて、 ちょっと前には想像もつきませんでしたねえ。 ジャズ新作を買わなくなり、専門店からも足が遠のいていた時期が長かっただけに、 ひさしぶりに通い出すようになると、店の品揃えがガラッと変わっていて、 隔世の感というか、なんだかすごく新鮮です。...
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