秀逸なジャケット写真が印象的だったモー!クヤテの前作。
フランスのファッション誌から飛び出してきたようなデザインに、
ウェスタナイズしたアフリカ人モデルといった風情で写っているものだから、
さぞやフランス人受けをねらったサウンドかと思いきや、
これが直球のマンデ・ポップで、そのフレッシュさに頬がゆるんだのでありました。
モー!クヤテは、77年、ギネアの首都コナクリ生まれ。
クヤテ姓からわかるとおり、グリオの出身で、
セク・ベンベヤ・ジャバテやウスマン・クヤテなどギネアの名ギタリストに憧れる一方、
サンタナ、B・B・キング、ジャンゴ・ラインハルト、ベン・ハーパーなどの
ギター・テクニックを学んできたというギタリストです。
フランスに渡り、ファトゥマナ・ジャワラやバ・シソコの伴奏を務めたあと、
14年にデビューEPをリリースし、15年に初のフル・アルバム“LOUNDO” を出しました。
グリオ出身らしいマンデの伝統と、ロック、ブルース、ジャズから学んできた
ポップ・センスが無理なく同居していて、フランス人チェロ奏者ヴァンサン・セガールや
イギリス人歌手ピアーズ・ファッチーニとの共演曲もしっくりしていて、
マンデ・ポップのアイデンティティを何ひとつ損なうことなく、
グローバルに通用するポップスに仕上げているところが嬉しいアルバムでした。
ここには、世界的な成功を収めたアマドゥ&マリアムが見失ったものがありますね。
成功を収めて以来のアマドゥ&マリアムのアルバムは、
欧米のファンを意識して、ますますオーヴァー・プロデュースになっていて、、
新作も、ヨーロッパ人好みのサウンドに装飾したプロダクションで、ヘキエキとしました。
そこへいくと、モー!クヤテのポップなプロダクションは、地に足がついています。
新作は、しなやかなサウンド・テクスチャーが光る、
洗練されたポップさに溢れたアルバムに仕上がっていて、前作を上回る出来。
ヒット性高そうな“Fankila” は、キャッチーなリフが本国ギネアでもウケそうだし、
ラストの哀愁味溢れるマンディングらしいスロー・ナンバーでは、
マカン・トゥンカラのンゴニ、セク・クヤテとモー!クヤテのギター二重奏が
織り成すアンサンブルに、カクシ味のように響かせたオルガンが妙味となっています。
しばらく聞かない間に、マンデ・ポップのサウンド・プロダクションも、
欧米サウンドへのアクセスの流儀がすっかり成熟したのを実感します。
モー!のファッションのサップールぶりにも、それが示されていますよね。
その自然体なモーの音楽に比べると、最新スタイルのサウンドへ擦り寄る
アマドゥ&マリアムは、あざとくすら聞こえてしまうなあ。
Moh! Kouyaté "LOUNDO (UN JOUR)" Foli Son Productions FOLISON811 (2015)
Moh! Kouyaté "FÉ TOKI" Foli Son Productions FOLISON927 (2017)