珍しくサヘル・サウンズの新作が、CDリリースされました。
このレーベルはデジタル配信と限定アナログのリリースがメインで、
めったにフィジカルを出さないので、ひさしぶりです。
マリのトゥアレグ人バンド、アマナール以来じゃないかしらん。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-05-30
アマナールのCDはすでに入手不可能のようで、
本当にごく少量(100枚程度?)しか生産していないんでしょうね。
サヘル・サウンズのCDは、リリース直後に買わないと、
すぐ売切れ御免になってしまうので、要注意であります。
リリースされたのは、ニジェールのアガデスを拠点に活動する、
トゥアレグ人ギタリスト、ムドゥ・モクタールのアルバム。
ニジェールのトゥアレグ人ギタリストというと、
ボンビーノが世界的に有名になりましたけれど、
ムドゥ・モクタールはボンビーノより8歳年下で、まだ30歳そこそこの若手。
左利きのギタリストです。
13年にサヘル・サウンズから配信とアナログでデビュー作を出し、
14年配信のみのセカンドをリリース、
15年ムドゥ主演の映画のサウンドトラック
(トゥアレグ版『パープル・レイン』!)を経て、
17年、3作目にして初CDリリース(配信・アナログもあり)と相成ったわけですね。
目元をぐわっとアップで捉えた白黒写真が印象的なジャケットは、
デビュー作のロー・ファイなトゥアレグ・ロックとも、
セカンドのドラム・マシーンやシンセを多用した、
チープなエレクトロ仕立てとも違う予感を、漂わせていますね。
つぶやくようなヴォーカルで内省的な歌を聞かせる、
アクースティック・ギターの弾き語りをベースに、
エレクトリック・ギターやカラバシ、コーラスも自身で多重録音した、
ムドゥ・モクタール完全独奏の渋いアルバムとなっています。
ドローンを奏でるリズム・ギターと、ひたすらループする
リード・ギターのフレーズに幻惑され、沈み込んでいくような トランスに誘われます。
ムドゥの声が軽やかなせいか、ディープな感覚は乏しいですが、
トゥアレグ独特の乾いた哀感が伝わってきて、胸に沁みます。
これがタマシェク語で郷愁、憧憬、思慕、切なさを意味する、<アソウフ>なのでしょう。
デザート・ブルースでよく目にする assouf というワードは、
<サウダージ>に相当するトゥアレグ音楽にとって重要なキーワードですね。
秋の宵に、ゆっくりと聴きたい一枚です。
Mdou Moctar "SOUSOUME TAMACHEK" Sahel Sounds SS043 (2017)