なんて清涼な歌声。
ヴァネッサ・モレーノを聴いて、ジョイスの“FEMININA” を思い浮かべるのは、
ぼくばかりではないでしょう。
ジョイスと同じ声質を持つジアナ・ヴィスカルジの方が、
ジャズ・センスの強さといった点で、より共通項があるといえるかもしれません。
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でもジャズ度の高さでいえば、ヴァネッサはジアナ以上。
サンパウロ州立ULM音楽学校でポピュラー歌唱を学び、
ソウザ・リマ音楽大学にも通ったというキャリアが物語るとおり、
ジャズ/フォークロア/クラシックを縦断する、高度な音楽性の持ち主です。
MPBというポップスの枠を超えた、アーティスティックな音楽性は、
サンパウロのノーヴォス・ コンポジトーレス派らしさではあるものの、
いわゆる庶民的な親しみといった大衆性に欠けるのが、玉にキズ。
ブラジルばかりでなく、近年南米各国に広がるこの種の芸術音楽志向は、
一部のインテリ相手の愛玩物となることに満足してしまって、
広くリスナーを求める姿勢が欠けているように思えてなりません。
ヴァネッサ・モレーノも、そういう芸術音楽志向タイプの歌手ですが、
みずみずしく、フレッシュな歌声が、
知的すぎる音楽に親しみと温かみをもたらしていて、本作には魅力を覚えました。
高速スキャットの軽やかさも、ブラジル人ならではで、
タチアーナ・パーラあたりが好きな人なら、たまらないはず。
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ファビオ・レアルのオーセンティックなスタイルのジャズ・ギターや、
アレシャンドリ・リベイロのクラリネットを多重録音した柔らかな木管の響きも
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聴きどころとなっています。
Vanessa Moreno "EM MOVIMENTO" Vanessa Moreno VIM001 (2017)