まさに、ヴェテランらしい余裕ですねえ。
アンゴラを代表するシンガー・ソングライター、
パウロ・フローレスの16作目となる新作は、
彼の持ち味であるデリケイトなソング・ライティングを、コクのあるノドで歌っていて、
あぁ、円熟したなあと、しみじみと感じ入れる傑作に仕上がっています。
最近はパウロ・フローレスの活躍ぶりが、いろいろと伝わってきますね。
サラ・タヴァレスの復帰作“FITXADU” でも、サラと詞を共作してましたもんね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-12-15
16年の前作“BOLO DE ANIVERSÁRIO” がズーク色の濃い、
明るく陽気な曲の多い作品だったのに対し、
新作はがらりと変わって、哀感を強く打ち出した作品となりました。
パウロの歌い口は、ソフトながらも、芯にガッツがあるのをいつも感じます。
かすかな苦味を含んだ声には哀しみも宿されていて、
それが胸に沁みるんですよねえ。
けっして性急にならない落ち着いた歌いぶりが、パウロの個性で、
キュートな女性コーラスをフィーチャーした軽快なキゾンバでも、
ダンス気分になるのではなくて、
思索的なパウロの歌い口に惹きつけられます。
メロウなフックのあるキゾンバでも、チャラくならないんですよね、この人は。
今作ではどの曲も哀愁を帯びているとはいえ、それぞれの楽想に合わせて、
カラフルにコーディネイトされたプロダクションが鮮やかです。
チープさが否めなかった前作のプロダクションとは、格段の差です。
アンゴラの代表的なパーカッションの
ディカンザをフィーチャーしたオーセンティックなセンバあり、
バンドリンやクラリネットをフィーチャーした切なさ溢れるコラデイラあり、
パウロがラップするヒップホップ・トラックまであります。
アルバムのなかで、ヒップホップ・トラックが浮かずに違和感なく収まっているのは、
プロダクションの手腕ですね。
センバのリズムを鮮やかにミクスチュアしていますよ。
このトラックでアレンジとギターを担当しているのが、
ギネア=ビサウ出身の才人マネーカス・コスタ。
マネーカスは前作でもエレクトリック・ギターを多くの曲で弾いていたし、
先ほどあげたサラ・タヴァレスのアルバムでも活躍していましたね。
この新作にアンゴラの若者へのメッセージを込めたとパウロは語っていますが、
アルバムを聴き終える頃には、涙が枯れ果てそうなほど哀感にまみれた本作、
パウロはここで何を訴えようとしたのでしょう。
Paulo Flores "KANDONGUEIRO VOADOR" Kassete/LS Republicano no number (2017)
Paulo Flores "BOLO DE ANIVERSARÍO" Frequetaplauso/Bartilotti no number (2016)