ミッキー・カッツが素晴らしいクラリネット奏者であったことは、
90年代のドン・バイロンによる再評価で知ったクチですけど、
コメディアンとして一世を風靡したというカッツの歌は、その後だいぶたってから、
カッツのキャピトル盤LPをまとめて入手して、ようやく知りました。
このあたりの音源は、ほとんどCD復刻が進んでいませんね。
カッツが冗談音楽のパイオニア、スパイク・ジョーンズのシティ・スリッカーズに
在籍していたというのもナットクの歌いっぷりに、ただただ唖然。
英語とイディッシュ語をちゃんぽんにしたコミカルな歌や、
曲中クレズマーのパートを何度も挿入して、場面をがらりと変えるアレンジは、
効果音で形態模写をするスパイク・ジョーンズとは、
また違う音楽性を持った芸人さんだったことがわかります。
英語やイディッシュ語がわかれば、
もっとカッツのお笑い芸の面白さがわかるんでしょうけどねえ。
アルバム・タイトルからして、黒田晴之さんの『クレズマーの文化史』によれば、
「しっちゃかめっちゃか」(MISH MOSH)だの、
「めっちゃバカ」(THE MOST MISHIGE)というのだから、
どれだけ笑えるものだったのやら、う~ん、言葉の壁の厚さがもどかしい。
日本語がわからない外国人が、トニー谷を聞いてるようなもんざんす。
とはいえ、音楽を聴いているだけでも、
1曲の中で、アメリカのポピュラー・ミュージックと
クレズマーが入れ替わる面白さに、おなかがよじれます。
素っ頓狂な場面展開に、ヴェトナムのカイルオンやミャンマーのミャンマータンズィンを
思い浮かべるのは、ワールド・ミュージック・ファンの性(さが)でしょうか。
ハヤりものならなんでも見境いなく取り込む、芸能音楽のタフな雑食性に、
ミッキー・カッツの本領が発揮されています。
[EP Album] Mickey Katz "BORSCHT" RCA EPB3193
[LP] Mickey Katz "MICKEY KATZ AND HIS ORCHESTRA" Capitol T298
[LP] Mickey Katz "MISH MOSH" Capitol T799 (1957)
[LP] Mickey Katz "KATZ PUTS ON THE DOG!" Capitol T934 (1958)
[LP] Mickey Katz "PLAYS MUSIC FOR WEDDINGS, BAR MITZVAHS AND BRISSES" Capitol T1021 (1958)
[LP] Mickey Katz "THE MOST MISHIGE" Capitol T1102 (1958)
[LP] Mickey Katz "KATZ PAJAMAS" Capitol W1257 (1959)
[LP] Mickey Katz "COMIN’ ROUND THE KATZKILLS" Capitol W1307 (1959)
[LP] Mickey Katz "THE BORSCHT JESTER" Capitol T1445 (1960)
[LP] Mickey Katz and “Der Ganser Gang” "SING-ALONG WITH MICKELE" Capitol T1744 (1962)