前作“MAMA AFRICA” でナイジャ・ポップ・シーンから、
インターナショナル・マーケットに飛び出したイェミ・アラデ。
「クイーン・オヴ・アフロビーツ」の称号を海外メディアから与えられるなど、
一躍注目を集め、ナイジェリアのスーパースターへと登りつめた女性歌手です。
その“MAMA AFRICA” は、タイトルにも示されているとおり、
ミリアム・マケーバの跡を継ごうという気概に溢れたアルバムでした。
インターナショナル向けのジャケットでは、
ナイジェリア国内盤のマーサイ・コスチュームはさすがに控えていましたけれど、
そんなファッションにも、
パン=アフリカン・ポップ・スターを目指す心意気が表われていましたね。
R&B/ヒップホップ・ベースの、はっちゃけたアフロ・ポップが痛快だった前作に続いて
リリースされた新作は『黒魔術』と、これまた物議を醸し出しそうなアブナいタイトル。
前作の『ママ・アフリカ』といい、
この人のイメージ戦略は、かなりリスクを取っていますね。
イギリス盤ジャケットは、顔から腕にペインティングしたヴィジュアルで迫っていましたが、
ナイジェリア盤はナチュラルなコスチュームで、特にタイトルを強調してはおらず、
マーケットによって慎重に使い分けているのがうかがえます。
ところで今回の本作、じっさいの音に触れる前に、
ナイジェリアのメディアに載った辛辣な記事を読んでしまったものだから、
実は聴くのが不安でした。
その記事では、
「音楽的な成長がまったく見られず、創造性に欠けている」とボロクソの評価で、
5点満点の2点という低評価だったのです。
このアルバム・レヴューを書いたジョーイ・アカン氏は、
ぼくが高く評価しているシミを、同じ記事の中で絶賛しているだけに、
なおさら信ぴょう性はありそう……。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-02-07
で、聴いてみたんですが、え、えぇ~、そこまで言う? というのが、ぼくの感想。
はじけたポップさは少し後退して、クールになったというのが全体の印象でしょうか。
たしかに前作の延長線上のアルバムではありますけれど、
プロダクションのクオリティは、前作より上がっているところもあるし、
南アのクワイトに接近したハウス・サウンドは十分魅力的です。
イボ・ハイライフを取り入れた“Kpirim” など、アルバムのフックとなる曲もあるし、
“Bread And Butter” や“Jantoro” のつっかかるリズムなんて、踊りたくなりますねえ。
ヨーロッパでの成功ばかりでなく、東アフリカや南アへの進出など、
パン=アフリカンなポップ・スターを目指すイェミ・アラデ、
同じ志向を持つオラミデよりも、彼女の音楽性の方が確かです。
Yemi Alade "MAMA AFRICA" Effyzzie Music no number (2016)
Yemi Alade "BLACK MAGIC" Effyzzie Music no number (2017)