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ニュー・アフリカン・アイデンティティ ファトゥマタ・ジャワラ

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Fatoumata Diawara  Fenfo.jpg

11年のデビュー以降、ボビー・ウォーマック、ハービー・ハンコック、
デーモン・アルバーン、アマドゥ&マリアム、スナーキー・パピー、
キューバのピアニスト、ロベルト・フォンセカとのプロジェクトなど、
ソロ・アクトとしての活動より、インターナショナルな他流試合で
キャリアを広げてきたファトゥマタ・ジャワラ。

7年ぶりの新作の知らせにも、
そのファッショナブルなジャケット写真にかえって不安はつのり、
グローバリズムにからめ取られた音楽になっているのではと懸念してたんですが、
まったくの杞憂でありました。
長いインターバルを経てリリースされた2作目は、
彼女のルーツであるワスル音楽に、しっかりと根差した作品となっています。
しかも今作では、デビュー作とは比べ物にならない逞しい歌声を聞かせていて、
ひと回りもふた回りも成長したのを感じさせます。

ファトゥマタのソングライティングにも、幅が広がりましたね。
そのためプロダクションも、ロック、ファンク、ブルース、フォーキーと、
曲ごとに意匠の凝らしがいがあるというもの。
それでいて、メロディにはくっきりとワスルが刻印されているんだから、
頼もしいじゃないですか。
前作はファトゥマタが弾くアクースティック・ギターを核にした
シンプルなサウンドでしたけれど、
今作はリズム・セクションを押し出してグルーヴ感を強め、
コーラスをレイヤーさせて、サウンドを華やかにしています。
ワスル音楽のローカルな味わいを活かしながら
インターナショナルに通用するサウンドづくりは、
先輩のウム・サンガレを範としたものでしょう。

目にも鮮やかなジャケットや、
ライナーの強烈なインパクトのある写真の数々を撮影したのは、
エチオピア人写真家のアイーダ・ムルネー。
ワシントン・ポストのフォトジャーナリストとして長く活躍し、
ニュー・ヨーク近代美術館MoMAの現代写真展でも注目された
女性フォトグラファーです。

近年、新たなアフリカのアイデンティティを探ることをテーマに、
従来のアフリカ観をひっくり返す、斬新な作品を生み出す作家が次々と現れてきました。
アイーダ・ムルネーもその一人で、カメルーンのサミュエル・フォッソ、
南アフリカのザネーレ・ムホーリ、ウガンダのサラ・ワイスワといった
ファトグラファーに、注目が集まっています。

ファトゥマタ・ジャワラは、
ワスル地方にルーツを持つマリ人両親のもとコート・ジヴォワールで生まれ、
幼い頃から父親の舞踏団に加わってダンスを習い、
女優の叔母の影響を受け、わずか17歳で女優となって成功を収め、
フランスへ移り住み、女優と並行して歌手活動を始めたという経歴の持ち主です。
多文化主義とアイデンティティに、おそらく自覚的な育ち方をしたであろう
ファトゥマタのようなアフリカ人が、アフリカの伝統を拡張しようとする
若いフォトグラファーと共振するのも必然で、
本作はそんなニュー・アフリカン・アイデンティティ志向を結実させた傑作といえます。

Fatoumata Diawara "FENFO : SOMEHIN TO SAY" Montuno 3355752 (2018)

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