40歳過ぎのトー・ガーは、ヴェテランのザンカー歌手。
数多くの音楽賞を受賞し、ヴェトナム国立交響楽団にもノミネートされ、
20年間に及ぶ歌手活動をしながらも、不幸な結婚生活によって、
長く苦しんでいたんだそう。
結婚生活にピリオドを打って昨年リリースした本作は、
歌手生活20周年を祝うとともに、再出発の記念作として出したとのこと。
故郷の中北部ハティンにちなんだ歌を集め、
心機一転のアルバムとしたようです。
トー・ガーは温かな声質が魅力の歌い手で、
声の太さに懐の深さと落ち着きが感じられて、
安心してその歌に身をゆだねられます。
強力な歌唱力を持ったザンカー歌手がひしめくなかで、
トー・ガーの歌は技巧を前面に押し出すことがないので、
ゆったりと落ち着いて聴くことができます。
強力過ぎない、フツーにうまい歌手の方が、聴き疲れなくていいですね。
歌を過不足なくバックアップするプロダクションも、
出しゃばることなく、かつ要所要所を引き締め、申し分ありません。
ダン・バウ(一弦琴)やダン・チャン(筝)などの、
ゆらぐ弦の響きを効果的に配しながら、
柔らかな弦オーケストラが包み込むサウンドは、芳醇と呼ぶにふさわしいもの。
ヴェテランらしい歌唱とマッチして、香しいアルバムに仕上がりました。
Tố Nga "GIẾNG QUÊ" Thúy Nga no number (2017)