シンディ・ブラックマン、テリ・リン・キャリントンといった大御所から、
キム・トンプソンやニッキー・グラスピーまで、
いまや女性ドラマーは珍しくなくなりましたね。
アリソン・ミラーは、ブルックリンをベースに活動する女性ジャズ・ドラマーで、
ブーム・ティック・ブームというグループを率いて10年来活動しています。
5作目となる新作は、アリソンのコンポーザーとしての才能が開花した、
素晴らしい作品となりました。
ピアノ、ベース、クラリネット、コルネット、ヴァイオリン、ベース、ドラムスという、
なんだかアーリー・ジャズ時代みたいなバンド編成ですけれど、
クラリネット、コルネット、ヴァイオリンが、
親しみやすくユーモアに富んだアリソンのコンポーズに、
絶妙なカラーリングを施しているんです。
たとえば‘The Ride’ では、フリーなドラム・ソロのイントロに続いて、
スカ/レゲエを参照したリズムへチェンジし、混沌としたアヴァンな演奏がしばし続くと、
一転チェンバー・ミュージックへと移っていきます。
かと思えば、いつの間にかゴーゴーのビートへと接続していくなど、
曲の中で場面をどんどん動かしていくところが、すごく面白くいんです。
なんの前触れもなく、クレズマーの旋律が唐突に飛び出すと、
その途端、エキゾティックな香りがふわーっと立ち上る場面など、クラクラしますよ。
ヴァイオリンがノン・ヴィブラートで、解放弦を鳴らすフィドルのような奏法をするせいか、
シド・ペイジのプレイを連想させ、
ダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックスの韜晦味にも通じるものをおぼえます。
いやあ、一筋縄でいきませんね、この人の作曲能力。
流れるようなアリソンの長いドラム・ソロや、ピアノがフリーに暴れる場面も、
すべてアリソンが組織立てたアレンジの中に収まっていて、
自由に演奏させるけれど、放任はしないといった構成に共感を覚えます。
そんなアリソンのセンスがシネマティックな物語性をコンポーズに与えていて、
もうワクワクが止まりません。
Allison Miller’s Boom Tic Boom "GLITTER WOLF" Royal Potato Family no number (2019)