ギリシャの女性歌手でサントゥーリを演奏する人といえば、
アレッティ・ケティメが一時期話題になりましたけれど、
ディミトリ・ニトラリというこの女性、アレッティ嬢よりはだいぶお年を召しています。
垢抜けないジャケ・デザインが妙に引っかかって買ってみたら、これが大当たりでした。
レンベーティカ色濃い古いスタイルのライカを歌う人で、
戦前スミルナ派の妖しくもいかがわしいムードをぷんぷんと撒き散らしているんですよ。
13年作という近作で、この濃厚な味わいは、ちょっとスゴいですよねえ。
イッパツで魅了されてしまいました。
プロフィールを調べてみたのですが、インターネットには情報がありません。
ご本人のフェイスブックはありましたけれど、バイオグラフィは載っていませんでした。
本作のほかにもう1枚CDが出ているほかは、
ディモーティカのコンピレーションにサントゥーリ奏者として名前を連ねているくらいで、
歌手としてのアルバムはほかになさそうです。
普段はサントゥーリ奏者として活動している人なんでしょうか。
サントゥーリのきらびやかな弦音が引き立つ、
ヴァイオリン、バグラマ、ブズーキなどの弦楽アンサンブルが、
ミクラ・アシアのムードを濃厚に醸し出します。
ダルブッカのパーカッシヴな打音やクラリネットの妖しい響きは、
かつてのイズミールの裏街へといざなわれるようで、
悪の華を垣間見る、アブない快楽に引きずり込まれる思いがします。
Dimitra Ntourali "TA ORAIA TIS SMYRNIS" Athinaiki Diskografii 116 (2013)