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ムーリッシュ・エレクトロ アフメドゥ・アフメド・ロウラ

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Ahmedou Ahmed Lowla.jpg

サヘル・サウンズの新作は、モーリタニアのシンセ奏者のソロ・アルバム。
相変わらずのサヘル・サウンズの悪弊で、CDには曲名しか載っておらず、
解説もクレジットもまったくなし。レーベル・サイトを見てもロクな情報は載っておらず、
かろうじてバンドキャンプの解説に、父親が有名なティディニート奏者である
音楽一家の生まれ、という一文があるので、
イガウィン(ムーア人のグリオ)出身の音楽家だということがわかります。

シンセサイザーとパーカッションによって演奏されるこのインスト音楽は、
バンドキャンプの解説によれば、モーリタニアでWZN(何の略?)と呼ばれていて、
街中、タクシーなどでガンガンかけられている人気のポップ・ミュージックなんだそう。
なかでもアフメドゥ・アフメド・ロウは、このジャンルの大スターで、
ラヌアクショットのパーティーや結婚式で引っ張りだこといいます。

聴き始めは、80年代初めのオラン産ポップ・ライみたいな、
チープなシンセ・サウンドかとも思ったんですが、
聴き進むうちに、しっかりとアレンジされ、練られた構成のサウンドに
すっかり感心してしまいました。いやぁ、音楽性高いぞ、この人。
初期ポップ・ライみたいな手癖のフレーズを垂れ流してたシンセとは大違いです。

アフメドゥ・アフメド・ロウラがシンセで演奏しているのは、
欧米のコピー音楽などではなく、ムーアの伝統音楽そのもの。
「カル」「レブテイト」といった曲名に表わされているとおり、
ムーア音楽の旋法ブハールに沿った演奏をしています。

伝統音楽にはなかった新たなハーモニーを加えて、
歌や合唱のメロディをさまざまな音色でレイヤーさせつつ、
伝統楽器のティディニートをエレクトリック・ギターに置き換えたサウンドも、
シンセで模しています。

ムーア音楽の本質をなんら歪めることなく、
ダイレクトにエレクトロニックなサウンドに変貌させたところがすごく新鮮で、
現地で大受けというのもよくわかります。
なんでもギリシャのシンセ奏者ヤニーの影響を受けたとのことで、
YouTube のライヴ・パフォーマンスなどを観ると、なるほどと思わせます。

Ahmedou Ahmed Lowla "TERROUZI" Sahel Sounds SS054 (2019)

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