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マルチニーク出身の若手ジャズ・ピアニストの実質デビュー作
(12年にデジタル・リリースのみのEPあり)です。
「カリビアン・ジャズの新星」とか謳われていますけれど、
そのテの宣伝文句は、疑ってかからないとねえ。
カリブ出身者だからといって、必ずしもルーツ・コンシャスな人とは限りません。
近年のマルチニーク出身のジャズ・ピアニストでは、
エルヴェ・セルカルとグレゴリー・プリヴァの二人が、そのいい例。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-12-16
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
クレオール性を視座に置いたジャズを演奏するエルヴェと、
マルチニークの伝統音楽とは別の、アカデミックな教育を受けて
新世代ジャズを演奏するグレゴリーとでは、まるで音楽性が違います。
カリブ出身というだけで、「カリビアン・ジャズ」や「クレオール・ジャズ」と
喧伝するのは、本人の音楽性を歪めて伝えることに繋がるだけ。
ジャズ界隈はこういう安易なラベリングが横行するので、注意が必要です。
で、マエ・ボーロワくんは、どちら派なのかといえば、後者の新世代ジャズですね。
クレオールやアフロ・アンティーユのリズムもメロディも、まったく参照されていません。
経歴を聞けばバークリー出身ということで、そうだろうなあとナットク。
編成はピアノ・トリオにヴィブラフォンとヴァイオリンが加わったクインテット。
1曲のみパーカッションがゲストに加わっていますが、
名前から察するにスペイン系で、マルチニーク出身者ではなさそう。
他のメンバーも、ヴィブラフォンの出身だけ不明ですが、
オーストラリア人女性ベーシストにスイス人ドラマー、
フランス人ヴァイオリニストと、多国籍な顔ぶれです。
ヴァイオリンがかなり個性的なプレイをしていて、要注目ですよ。
インタヴューを読むと、マリオ・カノンジュを尊敬しているというコメントがあったので、
もう少しクレオールな音楽性を聞かせるかとも思ったんですが、違っちゃいましたねえ。
でもそんななかにも、マエがヴォーカルを取った‘La Sirène’ で、
ラルフ・タマールばりの色気たっぷりな歌声を聞かせているのには驚かされました。
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ラルフ・タマールのソロ・デビューEP“EXIL” 中の1曲‘Ba Mwin’ が
マエのお気に入り曲ということで、ロマンティックな甘いヴォイスは、
ラルフ・タマールからの影響かもしれません。
そのラルフ・タマールとも、マエは16年にライヴで共演しています。
歌モノにマルチニークをわずかに感じさせるとはいえ、
本作最大の魅力は、コンテンポラリー・ジャズ・マナーの、
マエのコンポジションの良さにありますね。
ヴァイオリンの起用が成功したのも、コンポジションにぴたりハマったからで、
コンテンポラリー・ジャズのニュー・スターの誕生に喝采を送りましょう。
Maher Beauroy "WASHA!" Aztec Musique/Déclic Jazz CM2612 (2019)
Ralph Thamar "EXIL" GD Productions GCD45004 (1987)
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マルチニーク出身の若手ジャズ・ピアニストの実質デビュー作
(12年にデジタル・リリースのみのEPあり)です。
「カリビアン・ジャズの新星」とか謳われていますけれど、
そのテの宣伝文句は、疑ってかからないとねえ。
カリブ出身者だからといって、必ずしもルーツ・コンシャスな人とは限りません。
近年のマルチニーク出身のジャズ・ピアニストでは、
エルヴェ・セルカルとグレゴリー・プリヴァの二人が、そのいい例。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-12-16
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
クレオール性を視座に置いたジャズを演奏するエルヴェと、
マルチニークの伝統音楽とは別の、アカデミックな教育を受けて
新世代ジャズを演奏するグレゴリーとでは、まるで音楽性が違います。
カリブ出身というだけで、「カリビアン・ジャズ」や「クレオール・ジャズ」と
喧伝するのは、本人の音楽性を歪めて伝えることに繋がるだけ。
ジャズ界隈はこういう安易なラベリングが横行するので、注意が必要です。
で、マエ・ボーロワくんは、どちら派なのかといえば、後者の新世代ジャズですね。
クレオールやアフロ・アンティーユのリズムもメロディも、まったく参照されていません。
経歴を聞けばバークリー出身ということで、そうだろうなあとナットク。
編成はピアノ・トリオにヴィブラフォンとヴァイオリンが加わったクインテット。
1曲のみパーカッションがゲストに加わっていますが、
名前から察するにスペイン系で、マルチニーク出身者ではなさそう。
他のメンバーも、ヴィブラフォンの出身だけ不明ですが、
オーストラリア人女性ベーシストにスイス人ドラマー、
フランス人ヴァイオリニストと、多国籍な顔ぶれです。
ヴァイオリンがかなり個性的なプレイをしていて、要注目ですよ。
インタヴューを読むと、マリオ・カノンジュを尊敬しているというコメントがあったので、
もう少しクレオールな音楽性を聞かせるかとも思ったんですが、違っちゃいましたねえ。
でもそんななかにも、マエがヴォーカルを取った‘La Sirène’ で、
ラルフ・タマールばりの色気たっぷりな歌声を聞かせているのには驚かされました。
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ラルフ・タマールのソロ・デビューEP“EXIL” 中の1曲‘Ba Mwin’ が
マエのお気に入り曲ということで、ロマンティックな甘いヴォイスは、
ラルフ・タマールからの影響かもしれません。
そのラルフ・タマールとも、マエは16年にライヴで共演しています。
歌モノにマルチニークをわずかに感じさせるとはいえ、
本作最大の魅力は、コンテンポラリー・ジャズ・マナーの、
マエのコンポジションの良さにありますね。
ヴァイオリンの起用が成功したのも、コンポジションにぴたりハマったからで、
コンテンポラリー・ジャズのニュー・スターの誕生に喝采を送りましょう。
Maher Beauroy "WASHA!" Aztec Musique/Déclic Jazz CM2612 (2019)
Ralph Thamar "EXIL" GD Productions GCD45004 (1987)