ジール・オニイアのアルバムがタバンシから出ていたなんて、意外も意外。
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というのは、タバンシといえば、凡庸なアフロ・ポップやディスコものの
レーベルというイメージが、あまりにも強かったから。
80年代半ばのサニー・アデ・ブームで、日本にナイジェリア盤が大量に入ってきた折に、
タバンシのカタログもずいぶん聞きましたけれど、
どれもこれもB・C級のポップ作ばかりで、幻滅したものです。
当時買ったレコードは全部売っぱらちゃって、手元には1枚も残ってないもんねえ。
70年代初めにイボ人レーベル・オーナーの
チーフ・タバンシが設立したタバンシ・レコーズは、
ぼくが知るようになった80年代半ばには、
ポップスやディスコものがカタログの中心でした。
70年代にハイライフのアルバムを多数出していたことは、
ずいぶんあとになって知りました。
このガーナのハイライフ・バンド、ダイトマイト・スターライト・バンドもそんな1枚。
レコード番号から類推すると、70年代ではなく、83年頃のアルバムと思われます。
当時はガーナが深刻な経済不況に陥っていた時期で、
ナイジェリアのレコード会社に録音したのも道理です。
当時ガーナ国内ではレコーディングが行なわれることはなくなり、
ハンブルグ、ロンドン、アビジャン、トロントなど、
海外でハイライフのレコードが制作されていました。
ダイトマイト・スターライト・バンドというバンドは、
今回のリイシューで初めて知ったんですけれど、
聴いてみると、これがなかなかユニーク。
1曲目のイントロのホーン・セクションが入ってくるところで、
ええぇ~、これ、タウンシップ・ジャイヴじゃないの!とびっくり。
でも、リズムは確かにハイライフだし、歌が始まればそのメロディは、
まぎれもなくガーナ産ハイライフなんですけれども。
狐につままれたような気分でいたら、2曲目もホーン・セクションのリフが、
南アそのもので、ノケぞってしまいました。ガーナのハイライフと
南アのジャイヴがこんなふうにミックスされた音楽は、初めて聴きますね。
もっとも南ア色が濃いのは冒頭の2曲だけで、
ほかの曲はすべてガーナらしいダンス・バンド・ハイライフ。
ギターが「エル・マニセーロ」のリフを弾く曲や、
キーボードがユニークなサウンドを作っているところも、耳をひかれます。
いったいどういう経歴を持つバンドなのか、興味がわくところなんですけれども、
このダイトマイト・スターライト・バンドに関する資料は皆無のようで、
リイシューに携わったジョン・アームストロングも、ライナー・ノーツで困惑を隠しません。
バンドを名乗るも、メンバーの名前はおろか、人数すら不明で、
ジャケットに写る二人が、歌手なのかプレイヤーなのかもわかりません。
ガーナのハイライフが停滞した80年代に、
謎のバンドが残した知られざるハイライフ名作です。
Dytomite Starlite Band of Ghana "DYTOMITE STARLITE BAND OF GHANA" Tabansi/BBE BBE547ACD