エチオピア歌謡のヴェテラン女性歌手、アスター・アウェケの新作です。
前作から6年ぶりと、ずいぶん長いインターヴァルになりましたが、
今作はポップな前作“EWEDIHALEHU” とはガラリ変わって、
じっくりと歌ったシブいアルバムになりましたよ。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-11-30
オープニングからスローのエチオ情歌(ティジータ)で迫り、
ハイ・トーンを揺らしながら回すこぶし使いに、胸をキュッとつかまれます。
これぞアウェケ節といえる、若い頃から特徴的だった節回しなんですが、
若い頃は声が細くてキンキンと聞きづらかったものの、
円熟してすっかり角も取れ、まろやかになりましたねえ。いやあ、絶妙です。
前作のようなポップ作では、高音域を揺らすアウェケ節は影を潜めがちでしたけれど、
今作のようなスローやミディアム・スロー中心のレパートリーでは、
緩急自在に炸裂させていて、あらためて上手い歌手だなあと感じ入ります。
また、プロダクションががらっと変わったなと思ったら、
なんと長年の相棒アバガス・キブレワーク・シオタの名がありません。
アウェケ自身がプロデュースを務めていて、
今回はアレンジャーに、4人の名前が並んでいます。
そのアレンジャーも、前作とは総入れ替えになっていて、
1曲のみ担当のアビー・アルカだけが、前作に続いて起用されています。
アクースティック・ギターやホーンズの生音を効果的に使いながら、
ヌケのいいサウンドでじっくりと歌ったティジータ中心のアルバム。
ブルージーな‘Yewedede’ もグッときますねえ。
ディアスポラのエチオピア人を泣かせることウケアイの、
エチオピア歌謡アルバムです。
Aster Aweke "CHEWA" Kabu no number (2019)
左:エチオピア盤 右:アメリカ盤