マレウレウの新作がいい!
12年の前作『もっといて、ひっそりね。』は、ちょっとがっかりだったんですよね。
マレウレウのメンバー4人による無伴奏歌では、
マジカルなポリフォニーを堪能できるのに、
バンド・アンサンブルが付いたとたん、4人の声が<きれいに>整理されてしまって、
ポリフォニックなマジックが消えちゃうんですよ。
う~ん、なんで、こんなふうにしちゃうのかなあ。
4人の声が織り上げるニュアンス豊かなヴォイス表現を、
バンド・アンサンブルが雲散霧消させるようじゃ、意味ないじゃないの。
マレウレウの一番の魅力である、
ウポポやウコゥクに宿る複雑な声のモアレが生かされず、
単なる女性コーラスにしてしまっていることに、不満ぷんぷんだったのです。
プロデューサーのオキが、そんな点を意識していたのかどうかは知りませんが、
今作は原点回帰で、バンドはおろかリズム・セクションが付く曲もなく、
オキのトンコリが伴奏を付けた1曲あるのみという、シンプルさに徹しています。
たぶんオキも、前作のプロダクションはうまくいかなかったと思ってたんじゃないかな。
マレウレウの一番の良さって、遊び唄を楽しく歌うところだと思うんです。
みんながマレウレウに親しみを持つのは、そこなんじゃないのかなあ。
昔ばなしを聴くのを楽しみに待つ、こどものような心持ちにさせられるのは、
子守唄や遊び唄が持つ豊かな音楽世界を、マレウレウが運んできてくれるからですね。
そのために、アイヌの伝統音楽であるウポポやウコゥクを借りてきた、
そんなふうにもぼくには思えるんです。アイヌの伝統が先にありきだったのではなく、
歌の楽しさをアイヌの歌に発見したような。違うかな。
個性に富んだ4人の声のレイヤーを生かした今作は、
マレウレウの魅力が十二分に発揮されましたね。
4人の声が溶け合うのではなく、異なる声色が重なったり離れたりしながら、
さまざまな色合いの変化をつけていくところがなんとも味わい深く、引き込まれます。
思えばマレウレウにノック・アウトされたのは、
ア・カペラのみで歌ったミニ・アルバムのデビュー作でした。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-11-23
そのミニ・アルバムのレパートリーをもう一度歌い直した16年の「CIKAPUNI」では、
4人の声の重心が深くなり、ゆったりと大きくうねるようになったグルーヴに、
グループの深化を感じました。
今作は、「CIKAPUNI」の成果をさらに前に進めた作品といえると思います。
Marewrew 「MIKEMIKE NOCIW」 チカル・スタジオ/タフ・ビーツ UBCA1065 (2019)