オスティナートがまとめた伝統フナナーのコンピレをきっかけに、
フナナー周辺をいろいろチェックしてみたところ、
かつてフェロー・ガイタを結成したシャンド・グラシオーザが
新作を出しているのに気付きました。
シャンド・グラシオーザは、伝統フナナー再発見のキー・パーソン。
フェロー・ガイタを結成したばかりでなく、
サンティアーゴ島の老アコーディオン奏者ビトーリを発見し、
演奏活動に消極的だったビトーリを説得してコンビを組み、
ヨーロッパをツアーして、伝統フナナーの復興に努めてきた人です。
オスティナート盤には、ビトーリのあとコンビを組んだアコーディオン奏者の
チョタ・スアリと共演した06年作から、‘Nha Boi’ が選曲されていました。
フェロー・ガイタについては、デビュー作をリリースする前に
金銭関係のトラブルがもとでグループを抜けてしまったため、
シャンドはその名を残すこともなく、
その後ビトーリと活動するも、フェスティヴァルに参加するコネクションができずに
苦戦を強いられてきたようです。マネジメントに恵まれず、
思うように活動ができていないようで、
そんな不満をぶちまけたインタヴュー記事を読んだことがあります。
フェロー(金属製ギロ)をかき鳴らしながら歌うシャンドは、
サビの利いた声の、野趣に富んだ味わいのある歌手なんですが、
これまでのアルバムは、カーボ・ヴェルデのコミュニティだけでしか
流通していないインディ盤ばかりで、
世界にほとんど知られていないのは残念でなりません。
02年作も低予算の打ち込み使いのアルバムでしたけれど、
アコーディオンとフェローをしっかりと使って、
気合の入ったフナナーを聞かせてくれていました。
新作もフナナーを全面に押し出したアルバムで、
軽やかに疾走するリズムに、う~ん、気分もアガりますねえ。
アコーディオンとフェローが生み出すビートを核に、
シンセでサウンドに彩りを加えた快作となっています。
スークース調ギターをフィーチャーしたルンバあり、
終盤にはズークも2曲連続でやっていますよ。
シンセの扱いが90年代のポップ・フナナーと違い、
アコーディオンの後方でシンセをレイヤーさせる処理が巧みで、
フナナーのグルーヴを重視していることがよくわかります。
シャンドの重量感のあるヴォーカルも歌手としての力量を感じさせ、
聴き応えのあるアルバムとなりました。
実はこの新作を見つけた折、偶然にも他のオンライン・ショップで、
なんとビトーリとの共演盤を発見しちゃったんです!
以前アナログ・アフリカが2曲削って復刻したリイシュー作のオリジナル盤です。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-10-21
20年近く探しても見つからなかったCDで、
よくまあデッドストックが残ってたもんだなあ。
オランダにあるカーボ・ヴェルデ移民コミュニティの小さなレーベルから出たもので、
もう1枚、シャンド・グラシオーザがビトーリを
ヨーロッパに紹介するために組んだグループ、
ペトゥラルのCDまであったのには、オドロキ。
ペトゥラルはシャンドが組んだのに、なぜか本人は参加しておらず、
フェロー・ガイタの時みたいなイザコザがあったのかな?
いやぁ、それにしても、見つかる時ってのは、こういう偶然が重なるもんですねえ。
まぁ、こんなCDを探すような物好きは、世界でもぼくだけなんだろうけど
(アナログ・アフリカ主宰サミー・ベン・レジェブの言)。
この新作が少しでも聴かれるようになると、いいんですけれどねえ。
Chando Graciosa "SABURA KA TA MATA" Lo no number (2017)
Tchota Suari & Chando Graciosa "VALOR SEM FAVOR" Giva Productions GIVA2001 (2006)
Chando Graciosa "SIMINTÊRA" Tradiçon T003 (2002)
Bitori Nha Bibinha & Chando Graciosa "BITORI NYA BIBINHA & CHANDO GRACIOSA" CDS Music Center CDS09.98/3 (1998)
Petural "BAÍNO" CDS Music Center CDS05.99/5 (1999)