ディノ・ディサンティアゴの革新的なサウンドのあとでは、
旧態然とした保守本流のサウンドに聞こえてしまうのは、ややブが悪いですけど、
これはこれでカーボ・ヴェルデ音楽王道のサウンド、悪かろうはずがありません。
6作目を数えるマリアーナ・ラモスの新作は、タイトルそのものずばりの、
モルナに焦点を当てたアルバムです。
マリアーナ・ラモスを聴くのは、10年の“SUAVIDANCA” 以来なんですが、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-05-25
15年に1枚アルバムを出していたんですね。
そちら“QUINTA” は、聞き逃しちゃったなあ。
カーボ・ヴェルデの潮騒に人生の哀歓をのせて歌う島の情歌、モルナを歌うのに、
いままさに旬ともいえるマリアーナ・ラモス。円熟の歌声を聞かせてくれますよ。
いやあ、いい歌い手ですよねえ。
なめらかな歌声に、柔らかな節回し。自然体で歌う無理のない歌いぶりが、
メランコリックなモルナの秘めやかな味わいを、静かに伝えます。
マリアーナがモルナにチャレンジするのは、実はこれが2作目。
08年にも“MORNADOR” というアルバムを出していますけれど、
モルナにしては派手目のカラフルなあのアルバムに比べると、
今回はぐっと落ち着いた、モルナらしいシブイ作品になりました。
マリアーナもぐっと肩の力が抜けた歌いぶりに変わっています。
音楽監督とアレンジはトイ・ヴィエイラ。
セザーリア・エヴォラはじめ、ティト・パリス、ルーラほか
数多くのカーボ・ヴェルデ歌手のバックを務めてきた才人で、
ピアノ、ギター、カヴァキーニョ、ギター、ベース、ハーモニカを演奏するマルチ奏者です。
90年代からカーボ・ヴェルデ音楽のサウンドを担ってきた、
職人的なスタジオ・ミュージシャンですね。
そんなトイが作り出す、鉄板ともいうべき王道のサウンドにのせて、
ソダーデ溢れる島の歌謡音楽モルナをたっぷり堪能できます。
Mariana Ramos "MORNA" Casa Verde Productions 171739 (2020)