エチオ・ジャズのゴッドファーザー、ムラトゥ・アスタトゥケと
オーストラリアのエチオ・ジャズ・バンド、ブラック・ジーザス・エクスペリエンスとの
共演第2作が出ました。16年の“CRADLE OF HUMANITY” 以来、4年ぶりです。
メルボルンを拠点とするブラック・ジーザス・エクスペリエンスは08年結成、
同年にデビュー作を出します。翌09年、ムラトゥ・アスタトゥケが
オーストラリアでコンサートを行った時にバックを務めてから、
ムラトゥとの関係が始まり、10年越しの交流を経て、すっかり打ち解けたようですね。
今作でも、ブラック・ジーザス・エクスペリエンスのアンサンブルの中に、
ムラトゥのヴィブラフォンやウーリッツァーが、見事に溶け込んでいます。
まるでムラトゥがメンバーの一員に成りきったようで、
ムラトゥ・アスタトゥケの新作というより、
ブラック・ジーザス・エクスペリエンスのアルバムに
フィーチャリングされている感の強いアンサンブルを聞かせています。
エチオピアン人女性シンガー、エヌシュ・タイのポエトリー・リーディングを思わせる
つぶやくようなヴォーカルと、ジンバブウェ人MCのリアム‘モンク’モンクハウスのラップが、
アルバムにコントラストを作っていて、ヒップ・ホップとファンクとエチオ・ジャズが
無理なく同居していますね。
ムラトゥがクリエイトしたエチオ・ジャズが世界的に広まり、
孫にもあたる世代から、圧倒的な支持を受けるようになったことも幸いなら、
ムラトゥをリスペクトする若者たちとともに、
エチオ・ジャズをアップデイトしたサウンドに作り上げていけるなんて、
ムラトゥは幸せ者だなあと感じ入っちゃいますね。
老境を迎えた音楽家にとって、これ以上ない最高の境遇じゃないでしょうか。
Mulatu Astatke + Black Jesus Experience "TO KNOW WITHOUT KNOWING" Agogo AG135CD (2020)