ピロンを知ったのは、オスティナートから出た編集盤がきっかけ。
カーボ・ヴェルデ移民二世バンドのエレクトリック・フナナーは、聴く価値なしと、
長い間ずっとそう評価していたんですけれど、ヴィック・ソーホニーが選曲した
カーボ・ヴェルデ移民二世たちによるシンセ・ポップの編集盤には教えられることが多く、
再評価の必要を感じさせられたのでした。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-09-08
一年前、そのオスティナートから出たというので、
ルクセンブルクのカーボ・ヴェルデ移民二世バンド、
グルーポ・ピロンを聴いてみたんですが、う~~~ん。
チープなシンセ・ポップは、聴くのに忍耐を要するというか、やはり相当に退屈。
やっぱ、いまさら積極的に掘り起こすような音楽じゃないよなあ、というのが率直な感想。
そんなことも忘れかけていたところだったんですけれど、
つい最近、オスティナート盤のもととなった
ピロンのデビュー作から3枚目までのルクセンブルク盤を入手。
あらためて3作を聴いてみたところ、3枚目が快作で、目を見開かされました。
オスティナート盤には、原盤に関するディスコグラフィカルなデータが
一切記されていなかったので、ここで整理しておきましょうね。
オスティナート盤は、93年のデビュー作“TRADIÇAO”から3曲、
95年の2作目“NOS MENINOS”から2曲、
そして97年の3作目から1曲を選曲したものでした。
3作目では、2台のシンセをレイヤーして、
リード・ヴォーカル二人のハーモニーを生かしたグループのサウンドが
しっかりと確立されたのが聴き取れるんですが、
オスティナート盤はその3作目からの選曲が一番少なかったんだな。
というわけで、選曲がダメ、というのがぼくの判定。
86年結成当時のピロンは、ルクセンブルクに暮らすカーボ・ヴェルデ移民二世の
ティーンエイジャー・バンドだったわけですけれど、
3作目ではもう結成10年が過ぎていたんですね。
アントニオとアンブローズのゴメス兄弟のツイン・ヴォーカルを中心とする、
キーボード×2、ギター、ベース、ドラムスの5人編成で、
エレクトリック・フナナーのほか、コラデイラとズークをミックスしたコラズークに、
バラードも聞かせるアフロ・ポップ・バンドでした。
ちなみに、ピロンとは、カーボ・ヴェルデの伝統的なトウモロコシ料理とのこと。
エレクトリック・フナナーでは、アコーディオンの音色を模したシンセと、
もう1台のキーボードをレイヤーさせたサウンドが、いいブレンドとなっています。
ゴメス兄弟のヴォーカル・ハーモニーも、当時のバイーア・ポップ・バンド、
シクレッチ・コン・バナナやバンダ・メルなどに通じる爽やかなもので、
おお、いいじゃない!と盛り上がってしまいました。
ラスト・トラックのカーニバル・ソングを思わすゴキゲンなダンス・チューン
‘Pilon・Pilon Mix’ なんて、まるでトリオ・エレトリコ! サイコーだね、これ。
ヴィック・ソーホニーは、この3作目をストレート・リイシューすべきでしたね。
Grupo Pilon "LEITE QUENTE FUNANÁ DE CABO VERDE" Ostinato OSTCD007
Pilon "DI VOLTA" no label DRP9703 (1997)