ギター・ソロで新境地を見せたリオーネル・ルエケ
この人については、これまでクサしてばっかりだった気がしますけれど、 ハービー・ハンコックをカヴァーした新作には、完全脱帽。スゴイです、これ。 ハービー・ハンコックは、リオーネルをフックアップした師匠。 その師匠の名曲名演を演奏して、いわば恩返しした新作なんですね。 これほど独創的なハンコックのカヴァー・ヴァージョンは、聞いたためしがない。...
View Articleシンセはじける90年代カボ・ポップ ピロン
ピロンを知ったのは、オスティナートから出た編集盤がきっかけ。 カーボ・ヴェルデ移民二世バンドのエレクトリック・フナナーは、聴く価値なしと、 長い間ずっとそう評価していたんですけれど、ヴィック・ソーホニーが選曲した カーボ・ヴェルデ移民二世たちによるシンセ・ポップの編集盤には教えられることが多く、 再評価の必要を感じさせられたのでした。...
View Articleデビュー作は大学生 ナンシー・ヴィエイラ
カーボ・ヴェルデでぼくが一番好きな女性歌手が、ナンシー・ヴィエイラ。 18年に出た新作は、ちょっと物足りなくて、取り上げなかったんですけれど、 偶然に発見したデビュー作が思いのほか良かったので、書いておこうかなと。 表紙にヴィエイラの文字がなかったので、うっかり見落とすところでした。 バック・インレイに映るナンシーの顔も別人に見えて、 え?...
View Articleステラ・ハスキルを歌う カテリーナ・ツィリドゥ
戦前レベーティカから戦後ライカ揺籃期の 古いレパートリーを掘り下げて歌う、カテリーナ・ツィリドゥの新作。 前作は、スミルナ派レベーティカの作曲家パナギオーティス・トゥンダスの曲集という、 ディープこのうえないアルバムでしたけれど、 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-12-21 4年ぶりの本作は、サロニカ(現テッサロニキ)生まれのユダヤ人女性歌手...
View Article13年も前に帰還していた南ア・ポップのヴェテラン レッタ・ンブール
13年も前にアルバムが出ていたのに、ずっと気付かなかったとは、なんたる不覚。 南ア・ポップの名シンガーとして知られる、レッタ・ンブールの07年作です。 レッタ・ンブールといえば、 76年の代表作“THERE'S MUSIC IN THE AIR” が、なんといっても最高傑作でしたね。 あのアルバムのみずみずしさは格別で、 その後ディスコ/フュージョンに傾いた80年の“SOUND OF A...
View Article子羊のいる牧場で サリー・アン・モーガン
見開きジャケ内と裏ジャケに載る、 子羊を肩車したサリー・アン・モーガンの写真が、♡♡♡。 子羊の微笑んでいるような表情と、柔らかな光に包まれた写真が、 中身の音楽をすべて説明しているようじゃないですか。 写真のロケーションは、パートナーのギタリスト、アンドリュー・ジンと 彼女が所有するノース・カロライナ州西部にある4エイカーの牧場なのでしょうね。 (あまりに愛らしいので、写真を無断転載)...
View Articleマロヤ新世代の偉才 アン・オアロ
この訴えの強さは、いったいどこから来ているのだろう? 2年前レユニオンから登場した、 マロヤをベースとする新人シンガー・ソングライター、アン・オアロのデビュー作に、 戸惑いをおぼえつつ感じた第一印象が、それでした。 マロヤをルーツとして身体のなかに持っている人の歌声でなく、 あとから学び取った人の歌声だなということは、すぐに聴き取れました。...
View Articleシュヴァル・ブワとトゥバドゥの出会い デデ・サン=プリ
デデ・サン=プリの新作が到着。 昨年の最高傑作から、また一歩足を踏み出しましたね。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-04-19 シュヴァル・ブワを起点に、マルチニークの大衆芸能を拡張し、 たゆみなく更新し続けるデデ・サン=プリらしい仕事ぶりが、 今作でも見て取ることができます。 これほど逞しいマルチニークの伝統音楽家は、デデをおいて他にいませんね。...
View Articleエモい南ア・ハードバップ ザ・ヘシュー・ベシュー・グループ
おぅ、ついにこのレコードがリイシューされたかぁ。 南ア・ジャズに関心のない人でも、ジャケット・カヴァー名作として知る人の多い、 ザ・ヘシュー・ベシュー・グループの70年作です。 『アビー・ロード』のジャケットをパロディー化したレコードは、 世界津々浦々に山ほどあれど、このレコードほど秀逸なものはないでしょう。 荒れた未舗装の道路には、もちろん横断歩道のペイントがあるはずもなく、...
View Articleヴィブラフォンとバラフォン両刀使いの新人デビュー作 シモン・ムリエ
なんだか最近、ヴィブラフォンがきてる? ヴィブラフォン奏者のリーダー作が目立つように思うんですけれど。 これまでにここでも、ステフォン・ハリスやユハン・スーのアルバムを取り上げてきたし、 巷ではジョエル・ロスが大ブレイク中。 そのジョエル・ロスの新作と一緒に買ってきた、ブルックリンを拠点に活躍する フランス人ヴィブラフォン奏者シモン・ムリエのデビュー作に、 すっかりハマってしまいました。...
View Articleコロンビア伝統ポップの達人 カルロス・ビベス
映画のワン・シーンのような印象的なジャケット。 サウンドトラックかと見紛うのは、 コロンビアのヴェテラン・ポップ・シンガー、カルロス・ビベスの新作です。 『クンビアーナ』という魅力的なタイトルに、ソッコーいただいてまいりました。 カルロス・ビベス、いい男ですねえ。 もとはロック・シンガーからスタートした人ですけれど、 バジェナートの先達に敬意を表して、オールド・スクールなバジェナートを...
View Articleカーボ・ヴェルデ伝統ポップの期待の若手 アッソル・ガルシア
カーボ・ヴェルデから、伝統系のいい若手女性歌手が出てきましたよ。 15年にデビュー作を、昨年セカンドを出したアッソル・ガルシアは、 89年、フォゴ島サン・フィリペ生まれの女性歌手。 2作とも配給がフランス経由でなくアメリカ経由のため、 長年気付けずにいましたが、首尾よく2作とも入手することができました。 アメリカ、ポルトガル、オランダ、ルクセンブルクに点在する...
View Article知られざるカーボ・ヴェルデ伝統ポップ名作 トー・アルヴェス
久しぶりにカーボ・ヴェルデ現地産CDをチェックしてみたら、あるわ、あるわ、良作が。 一番の注目は、アッソル・ガルシアでしたけれど、 06年のデビュー作が傑作だったトー・アルヴェスのセカンドが出ているのを、 遅まきながら発見しました。 う~ん、ジャケット・デザインは、いかにも自主制作らしいローカルな仕上がり。 デビュー作はそれなりにアカ抜けてたのになあ。...
View Articleサロンの香り豊かなヴァイオリンの調べ ジェジーニョ
貴重なリイシュー作も見つけましたよ。 1912年、カーボ・ヴェルデのブラヴァ島生まれというヴァイオリン奏者、 ジェジーニョことジョゼ・ゴメス・ダ・グラサの56・64年録音です。 15年に出た自主制作盤で、ルサフリカ配給というクレジットがあるものの、 ネット検索しても配給された形跡はなく、まったく見たことがないCDです。 タイトルによれば、内容は64年にリスボンで録られたライヴ録音で、...
View Articleフォーキー・センバ チャロ・コレイア
ハーモニカ・ホルダーを首にかけたギター弾き語りの歌手といって思い浮かぶのは、 ボブ・ディランをはじめとする60年代のフォーク・シンガーたちです。 アフリカでこのスタイルの歌手というと、セネガルのイスマエル・ローと マダガスカルのジャン・エミリアンぐらいかと思っていたら、 アンゴラにもハーモニカー・ホルダー使いのシンガーがいるのを発見しました。...
View Article蘇ったアヤリュウ・メスフィン&ブラック・ライオン・バンド
うぉう、すごいな、これ。 エチオピア音楽の黄金時代である70年代に活躍した歌手、 アヤリュウ・メスフィンの往時の全録音が復刻! 以前ナウ=アゲンがアヤリュウ・メスフィンの単独復刻を実現した時は、 LPと配信のみのリリースで、CDが出ずに地団太を踏んだので、 今回の3CD化は感涙ものです。 ただし、5枚組で出たLPの方は、美麗ボックス入りなのに、...
View Article地中海を挟む音楽家が邂逅したアラブ・アンダルース音楽 レ・オリエンタル
「アルジェリアのミュージックホール」。 う~ん、なんて匂い立つようなタイトル。 聴いてみればライヴ盤で、リリ・ボニッシュの‘Alger, Alger’ ‘Ana Fil Houb’に リーヌ・モンティの‘Khdaatni’、ファリド・エル・アトラシュの‘Wayyak’ などなど、 アラブ・アンダルース音楽やアラブ歌謡ファンならなじみ深い名曲がずらり。...
View Articleインプロヴィゼーションのスリルが紡ぐ物語 ジョン・アームストロング
コロナ禍のインフォデミックが引き起こす、 世論のヒステリーに苛立ちを募らせていた今年の春先、 絶好の鎮静剤となってくれたのが、ダン・ローゼンブームのアルバムでした。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-04-27 そのダン・ローゼンブームが参加した テナー・サックス奏者ジョン・アームストロングの新作も、...
View Articleアントニオ・サンチェス・ファン必聴作 トリオ・グランデ
いぇ~い、こういうアントニオ・サンチェスが聴きたかった! リーダー作では、エレクトロニカを取り入れたり、 長尺の組曲に取り組むなどの野心作が続いていましたけれど、 新ユニットのアルバムでは、たっぷりとアントニオ印のドラミングが聞くことができます。 フィルをいっぱい入れて、タムも盛大に叩いているのに、 ぜんぜんうるさくならないアントニオのドラミング。 メロディックなばかりか、コード感まで表現して、...
View Article謎めく魅力 エリック・レヴィス
エリック・レヴィスが、ブランフォード・マルサリス・カルテットのベーシスト だということを知ったのは、ずいぶんあとになってからでした。 ぼくがレヴィスに注目したのは、ピアニストのクリス・デイヴィスとの共演がきっかけで、 フリー/アヴァンギャルド系の人とばかり思っていたからです。 とりわけ、2年前の来日で観た二人のデュオ・ライヴが凄まじくって、 いまなお鮮烈な記憶が、なまなましく残っています。...
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