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13年も前に帰還していた南ア・ポップのヴェテラン レッタ・ンブール

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Letta Mbulu  CULANI NAMI.jpg

13年も前にアルバムが出ていたのに、ずっと気付かなかったとは、なんたる不覚。
南ア・ポップの名シンガーとして知られる、レッタ・ンブールの07年作です。

レッタ・ンブールといえば、
76年の代表作“THERE'S MUSIC IN THE AIR” が、なんといっても最高傑作でしたね。
あのアルバムのみずみずしさは格別で、
その後ディスコ/フュージョンに傾いた80年の“SOUND OF A RAINBOW” や、
83年の“IN THE MUSIC THE VILLAGE NEVER ENDS”、
シンセ・ポップの91年の“NOT YET UHURU” など、
レッタの歌声の輝きに変わりはないものの、時流のサウンドとの折り合いのつけ方は、
“THERE'S MUSIC IN THE AIR” には遠く及ぶのではありませんでした。

いずれのアルバムもプロデュースを務めたのは、レッタの伴侶、カイファス・セメニヤ。
カイファスは多くの曲を提供するばかりでなく、アレンジや、時にヴォーカルも務め、
公私ともに音楽パートナーとして、レッタをずっと支え続けてきました。
今思えば、68年に出したレッタの2作目のタイトルが「フリー・ソウル」だったのは、
のちに欧米から見たレッタの立ち位置を暗示していたように思えます。

さて、そのレッタの07年作。
時代からして、クワイトの影響があるんだろうなと思っていましたけれど、
予想通り、冒頭の2曲は打ち込み使いで、
1曲目はポップ・クワイト、2曲目はレゲエ調のアフロ・ポップです。
3管のホーン・セクションも起用して、サウンドをゴージャスに演出しています。
打ち込みのドラム・サウンドと相性のいいシンセ・ベースが、よくホップしていますね。

フュージョン系ギタリストのルイ・ムランガが冒頭の3曲で起用され、
3曲目で短いながら、印象的なアクースティック・ギター・ソロを聞かせます。
その3曲目以降は、ドラムスとベースによる生のリズム・セクションで、
従来のレッタらしいアフロ・ポップ・サウンドとなっていて、こうした構成もいいですね。
こちらのキー・パーソンは、ジャズ・ピアニストのテンバ・ムクイジかな。

レッタの声は、声域が低くなって落ち着いた声となり、
それに合わせて、シブい歌い方に変えています。
70年代とは違った歌いぶりですけれど、枯れた味わいがいいじゃないですか。
無理に強く歌うことをせず、静かに語りかけるような歌い口が、
齢を重ねたヴェテラン歌手らしい、いい変化なんじゃないかなあ。

南アの大地を踏みしめるような、ミディアムの懐の深いグルーヴも心地良いですね。
ビリンバウをサンプリングした電子音で始まる‘Akekho’ は、
南アの伝統リズムを現代的なビートに接続させ、
打ち込みと生ドラムスを重ねたリズム処理が、すごくキャッチー。
カイファスの時宜を得たプログラミングが成功したトラックで、これは聴きものです。

サンバのラスト・トラックまで、手を変え品を変え楽しませてくれるプロダクションは、
80~90年代に不満が残る作品しか残せなかったレッタにとって、
見違えるような会心の出来になっているじゃないですか。
なぜこれが当時話題にならなかったんでしょう。謎すぎます。

Letta Mbulu "CULANI NAMI" Sony BMG CDPAR5024 (2007)

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