ハーモニカ・ホルダーを首にかけたギター弾き語りの歌手といって思い浮かぶのは、
ボブ・ディランをはじめとする60年代のフォーク・シンガーたちです。
アフリカでこのスタイルの歌手というと、セネガルのイスマエル・ローと
マダガスカルのジャン・エミリアンぐらいかと思っていたら、
アンゴラにもハーモニカー・ホルダー使いのシンガーがいるのを発見しました。
それが、68年ルアンダ生まれのシンガー・ソングライター、チャロ・コレイアです。
そもそも、ハーモニカ・ホルダーを使って
ギターを弾き語るスタイルは、誰が始めたんでしょうね。
レス・ポールの36年のデビュー当時の写真に、ハーモニカ・ホルダーを首にかけて、
ギターを弾いている写真がありますけど、ひょっとしてレス・ポールの発明なのかなあ。
なんせレス・ポールは、希代の発明家だからねえ。すでに10代前半で、
自作のハーモニカ・ホルダーを使っていたという話が残っているくらいだから、
まんざら間違いじゃない気がするんですけれど、
どなたか真相を知る方はいませんでしょうか。
話が脱線しちゃいましたけど、チャロ・コレイアは子供の頃、
母親からプラスチック製のギターを買ってもらって、ギターを弾き始めたそうで、
ハーモニカを吹くようになったのは、レビータの演奏で使われる
コンセルティーナのサウンドに憧れたからだそうです。
アメリカのフォーク・シンガーや、イスマエル・ローとかの影響ではなかったんですね。
若い頃は、ギターをとるか、ハーモニカをとるかの二者択一に悩んだものの、
その両方のサウンドとも自分には必要と悟り、現在のスタイルに落ち着いたのだそう。
チャロのバックグラウンドにあるのは、70年代のアンゴラ音楽黄金時代の音楽で、
ンゴラ・リトモス、ダヴィッド・ゼー、ウルバーノ・デ・カストロ、オス・メレンゲス、
オス・キエゾスに影響されて育ったとのこと。
90年代前半に内戦から逃れるためにポルトガルへ渡り、
自作曲を歌って歌手活動を始めますが、チャロのギターを核とした
オーガニックなサウンドは、センバをはじめ、レビータ、カズクータ、ルンバなど、
どのレパートリーにも在りし日のアンゴラ音楽のテイストが強く宿っているのを感じます。
それを実感できるのが、15年のデビュー作“KUDIHOHOLA” と、
17年のセカンド作“AKUÁ MUSSEQUE” の2枚。
デビュー作は全6曲わずか23分弱のミニ・アルバムですけれど、
ほっこりとした丸みのあるビートにのせて、フォーキーなセンバを歌っています。
チャロはポルトガルに渡った後、ヨーロッパのみでしか演奏活動をしておらず、
アンゴラでは一度もコンサートを行っていないにもかかわらず、15年のデビュー作は、
16年のアンゴラ音楽賞のベスト・アルバム部門ほか2部門にノミネートされたのだそう。
意外なのが、今年になってドイツのDJ系レーベルが、
デビュー作収録の2曲をシングル・カットしたことで、
「エキゾチックともいえる独自の音楽性で聴くものを陶酔させるオブスキュアすぎる一枚」
なんて書いている輸入CDショップの宣伝文句には、吹き出しちゃいました。
田舎ぽさ満点ののんびりとしたグルーヴがたまらない、カズクータの"Kudiholola" なんて、
クラブに集う若者の興味をそそるとは思えないんですけれど、
ほんとにこれがウケるなら、もっとセンバに注目が集まらなきゃ、ウソだよねえ。
Chalo Correia "KUDIHOHOLA" Celeste Mariposa no number (2015)
Chalo Correia "AKUÁ MUSSEQUE" no label no number (2017)