カーボ・ヴェルデのシンガー・ソングライター、エリーダ・アルメイダの3作目となる新作。
過去2作は声や歌いぶりに魅力を感じられず、
あまりいい印象を持っていなかったんですが、
今作はサウンドにさまざまな工夫がみられ、フックの利いた曲が目立つなど、
ソングライターとしての成長がうかがえ、これは注目しないわけにはいきませんね。
まずオープニングのタバンカの‘Bidibido’ に、おっ、と腰が浮き上がりました。
最近はカーボ・ヴェルデでも、タバンカをやる音楽家が少なくなってしまったので、
意表を突かれた思いがしましたけれど、
ゆったりとした遅めのテンポで聞かせるグルーヴは、格別です。
タバンカは、フナナー同様、アフロ系住民のダンス・ミュージックで、
エリーダの出身地サンティアゴ島では、祭りに欠かせない音楽です。
フナナー同様、せかせかとしたアップ・テンポが一般的なところ、
このBPMを抑えた懐の深いタバンカは、味わいを感じさせるじゃないですか。
エリーダはサンティアゴ島東部の貧しい家に生まれ、
母親の行商を手伝いながら、教会で歌ってきたという人なので、
島の中心地プライアでモルナを歌ってきた歌手とは、タイプが違うんですね。
モルナのようなヨーロッパ成分の強いクレオール歌謡より、
タバンカやフナナー、バトゥクといった、アフロ色濃いダンス・ミュージックの方が、
より彼女らしさが発揮できるんじゃないでしょうか。
「新世代」を意味するタイトルの今作は、
こうしたアフロ系のレパートリーに、魅力を発揮しているのが特徴です。
ケニヤのプロデューサー/DJのブリンキー・ビルがビートメイクした‘Tolobaska’ は、
まさにそんな「新世代」らしいサウンドで、
同じくブリンキーが起用されたラスト・トラックの
‘Nha Bilida’は、エレクトロ強めのアフロ・エレクトロ・ポップを聞かせています。
このほか、カッサヴのジャコブ・デュヴァリューが参加した‘Funana’ は、
タイトルもそのものずばりなら、アコーディオンをフィーチャーした本格的フナナーで、
ジャコブはキーボード・ソロも披露しています。
自作曲以外では、90年代のエレクトリック・フナナー・バンド、
ブリムンドの‘Mundu Ka Bu Kába’(Mundu はMundo の誤記では?)を取り上げていて、
ハツラツとしたヴォーカルを聞かせてくれます。
やはりこういう曲の方が、エリーダの歌は映えますね。
Elida Almeida "GERASONOBU" Lusafrica 862002 (2020)