ディノ・ディサンティアゴの18年前作“MUNDU NÔBU” は、
ルソフォン・ミュージックのマニフェストと呼ぶにふさわしい、
新たなアフロピアンの時代の幕開けを象徴するアルバムでした。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-03-26
カーボ・ヴェルデのリズムを、
ヒップ・ホップ/R&B世代のエレクトロなサウンドに回収した
新たな才能の登場に、確かな手ごたえを感じたものの、
その手ごたえに見合ったセールスと結びつかないところに、
ルソフォン・ミュージックが置かれているポジションを思い知らされます。
ここ10年くらい、アンゴラやカーボ・ヴェルデなどのルソフォン・ミュージックが、
高水準の作品を生み出し続けているというのに、
世間の注目がまったく集まらないのには、歯がゆさを禁じ得ません。
お~い、ここにグッド・ミュージックがあるぞ~!と声を上げ続けることに、
当ブログの存在意義があるとはいえ、徒労感がないといったらウソになりますね。
新作“KRIOLA” は、タイトルが示すとおり、ディノのクレオール主義を具現化したもの。
それは、ヒップ・ホップ/R&B世代のポップスのサウンドを、
欧米由来のリズムで表現するのをやめ、
自分たちのルーツのリズムで再現しようという試みですね。
レゲトンやズークが世界を席巻したように、ディノはフナナーやバトゥクといった
カーボ・ヴェルデのアフロ系リズムで、それを成し遂げようとしています。
タイトルを男性名詞のクリオロではなく、女性名詞のクリオラとしたところもいいなあ。
90年代に西ロンドンのクラブ・シーンで活躍したイギリス人プロデューサー、
セイジ(ポール・ドルビー)を中心に、リスボンのクドゥロ・ユニット、
ブラカ・ソム・システマの元メンバーのカラフ・エパランガが、
前作に引き続き、ソングライティング、トラックメイク、プロデュースに関わっています。
今作の最大の注目トラックは、
ポルトガルで人気沸騰中の若手ラッパー、ジュリーニョ・KSDが参加し、
軽快なアコーディオンをフィーチャーしたフナナーのタイトル曲。
ディノと共作して共演も果たしたジュリーニョは、
自分がフナナーのビートで作曲できるとは思わなかったと語っていて、
ルソフォン・ミュージックの方向性を、次世代に繋ごうとする
ディノの目論見は果たせたようですね。
ナンパなアフロ・ズーク、キゾンバを得意とする、カーボ・ヴェルデ系オランダ人シンガー、
ネルソン・フレイタスをゲストに迎えた‘My Lover’ は、
いかにも甘々なラヴ・ソングですけれど、
ギターやパーカッションのシャープなサウンドが利いていて、
エッジはちゃんと立ってるんだなあ。
アンビエントなムード漂うラスト・トラックの‘Morna’ まで、
ルソフォン・ミュージックのエッセンスを溶かし込んで、
現代的なサウンドにデザインした会心作です。
Dino D’Santiago "KRIOLA" Sony Music 19439816922 (2020)