ジョン・バティステの“WE ARE” を絶賛愛聴中なんでありますが、
あのアルバムにはPJ・モートンも客演しているんですよね。
何年か前、PJ・モートンの“GUMBO” が話題になったとき、
CDを探すも見つからず、そのまますっかり忘れていたことを思い出しました。
あ、日本盤は出ているんですけれどね。
できるかぎりオリジナル盤で買うという、メンドくさい性分がいまだ抜けないもんで。
その後、ライヴ会場でしか売っていないらしいとかの情報を耳にして、
んじゃ、しかたがないかと諦めてたんですが、
思い出しついでにネット検索してみたら、ご本人のサイトで販売していることが判明。
翌年に出したスタジオ・ライヴ盤“GUMBO UNPLUGGED” もあったので、
一緒にオーダーしたのでした。
ニュー・オーリンズ出身のシンガー・ソングライター、というより、
キーボーディストやプロデューサーとしての活躍のほうが有名なPJ・モートン。
マルーンなんちゃらという人気ロック・バンドへの参加が、
この人の名刺がわりのように必ず言われますけれど、
かつてのビートルズとビリー・プレストンみたいなもんでしょうかね。
もともと楽曲提供や客演仕事などの裏方仕事が長かった人で、
ゴスペルを出自とする音楽性に加え、職人肌のR&B、ヒップ・ホップ、ジャズ使いに、
プロデューサーらしい才能ぶりがうかがわれます。
“GUMBO” というタイトルに、ルーツのニュー・オーリンズ色濃い内容なのかと思ったら、
さにあらず。人肌のぬくもりが伝わる70年代ソウル・マナーの生演奏サウンドに、
思わず感涙してしまいました。
そして、この徹底したスティーヴィー・ワンダー節も、いいじゃないですか。
こういうスティーヴィー・ワンダーそっくりさんシンガーって、
ときどき登場するけど(ミュージック・ソウルチャイルドとか)、
なぜかこの人の歌いっぷりには、その種のフォロワーにおぼえる抵抗感を感じず、
素直に聞くことができました。
おそらく彼が単なるシンガーではなく、演奏能力も高いプロデューサーとしてのセンスを、
サウンドのすみずみまでに発揮しているからじゃないかな。
ニュー・オーリンズ色はないと言ったものの、
前のめりに突進していく‘Stickin To My Guns’ あたりは、
ニュー・オーリンズ・ファンクらしいところ。
ストリングスのアレンジが、マット・ジョーンズという人がやっていて、
演奏はマット・ジョーンズ・オーケストラとクレジットされていますね。
シカゴの若手アレンジャーだそうで、独特のサウンドを生み出していて、
アレンジばかりでなくミックスも独自の個性を感じさせます。
そして、“GUMBO” 全曲をスタジオ・ライヴで一発録りした“GUMBO UNPLUGGED” の
一体感は見事としかいいようがありません。YouTube でも視聴できますけれど、
ストリングス・オーケストラ含め、
ミュージシャン全員がひとつの部屋に入り(コーラスだけ別部屋)、
せーのでやっている臨場感の素晴らしさといったら、もう。
こういう現場を取り仕切れる能力も、プロデュース経験のなせる業でしょう。
また、BJザ・シカゴ・キッドとハミルトンズをフィーチャーした
‘Everything's Gonna Be Alright’ の高揚感がたまりません。
ゴスペルばかりでなく、ニュー・オーリンズ・ファンクのテイストも加わっていて、
曲順を変えたライヴ盤では、アルバム・ラストに置いて、
大団円の盛り上がりになっているのも、サイコーです。
PJ Morton "GUMBO" Morton no number (2017)
PJ Morton "GUMBO UNPLUGGED" Morton no number (2018)