すっかりごぶさたとなっている、湾岸ポップスのハリージ。
もう4年も前のアルバムですけれど、イエメン系のUAE(アラブ首長国連邦)人歌手、
バルキース・ファティの3作目を買ってみたら、これがなかなかの力作。
ハリージ・ブーム真っ盛りの15年にロターナから出ていた前作を聴いて、
歌える人だなあと思っていましたけれど、
そのときは記事にしなかったので、一緒に前作の写真も載せておきましょうか。
前作は、ギクシャクとしたパーカッシヴなハリージ・ビートにのせて、
ハツラツとしたコブシ使いの若々しさが印象的でしたけれど、
ロターナから自主レーベルに移籍して出した本作は、
プロダクションがぐんと向上しましたね。
エレクトロ・ハリージとでも呼びたくなるような、
選び抜かれた音色の電子パーカッションが快感。
生音とエレクトロの絶妙が配分されて、
すんごいセンスの良いサウンドになりましたよ。
前作は、サウンドの下世話さがポップな風味となっていましたけれど、
シンセ音が古めかしかったり、オーケストレーションが妙に厚ぼったくて、
野暮ったかったりしていたのも事実。アレンジもずいぶんと大仰だったしね。
それに比べたら、今作はレイヤーされた音色が選び抜かれていて、
サウンドが磨き上げられましたよ。
バラードがぐんと良くなったのも、
そんなデリカシーに富んだプロダクションのおかげでしょう。
高中低音のミックスのバランスが整って、
前作のガチャガチャしたところも雲散霧消しましたね。
バルキースの歌の上手さは、前作ですでに実証済みなので、
本作も申し分ありません。彼女は、UAEを拠点とするNSO交響楽団のメンバーでもあり、
国連から「中東における女性の権利の擁護者」の称号も与えられているんですね。
サウジアラビアで初の女性のみのコンサートを行い、話題を呼んだそうです。
今年になってからは、配信でシングル・リリースもしているので、
新作も期待できそうですね。
Balqees "ARAHENKOM" Balqees no number (2017)
Balqees "ZAI MA ANA" Rotana CDROT1916 (2015)