ギリシャ歌謡の良盤探しは、原田さんに頼りっきりなんですが、たまには自力発掘を。
12年に出ていた、「ザ・ヴォイス・オヴ・レンベーティカ」という
リイシュー・シリーズを見つけました。
初期レンベーティカの名歌手たちの選集となっています。
シリーズというわりには4タイトルしか出ていないんですが、
縦長のCDブック仕様で、50ページないし64ページのブックレット付という、スグレもの。
ざらりとしたクラフト紙に印刷した、古びた味わいのデザインが
レンベーティカという内容にぴったりで、<手元に置いときたい欲>をかられます。
貴重な写真も満載の解説に、全曲歌詞付き、
作詞作曲者、伴奏者、録音データ、SP原盤番号のクレジットも完備した
資料的価値の高さは、リイシューの仕事として満点の内容でしょう。
ギリシャ語のみとはいえ、今日びテキスト化して
翻訳ソフトにかけりゃいいんだから、問題ありませんね。
ギリシャ盤は値段の高さが難なんですけれど、
このシリーズは廉価版なみの安さが嬉しいところ。
いつもなら、どれを買うかとよく吟味するところ、
えいやっと4タイトル全部買っちゃいました。
ローザ・エスケナージは、いったいこれで何枚目かとも思うんですけれど、
懲りずにまた買ってしまっても正解と思えるのは、音質がめちゃくちゃいいから。
このシリーズ全部にいえることですが、SPの音の再現性がすばらしい。
単にノイズ・リダクション処理だけの問題ではなく、SPのガッツのある音を引き出して、
なまなましいサウンドを蘇らせているんです。
ヨルゴス・カタロースという人は初めて知りましたが、ギター弾き語りという変わり種。
早くにアメリカへ渡り、録音はすべてアメリカで行われています。
まるで、レンベーティカ版ギターを持った渡り鳥ですけれど、
じっさいハリウッドで大成功を収めていた無声映画のダンサーと恋に落ちて、
映画界に人脈を作って名を上げ、その後各地を転々と旅をし、
まさしくギターを持った渡り鳥の生活を送った人だそうです。
レンベーティカがギリシャのブルースと形容されるのとはまた別の意味で、
戦前ブルース的なギター弾き語りのレンベーティカが聴けるわけですけれど、
スミルナ派のような多文化混淆の深い味わいはまるでなく、ドライなところが味気無い。
ギリシャ録音史上、もっとも早く録音を残した歌手のひとりとされるマリカ・パパギカは、
初期レンベーティカらしいヴァイオリン、チェロ、サントゥールという
シンプルな伴奏のほか、シロフォンやブラス・バンドが伴奏につく珍しい曲も聞けます。
1910年にニュー・ヨークへ渡った、イピロス出身のヴァイオリニスト、
アレヒス・ズンバスが伴奏を務めている曲もあり、聴きものです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-07-29
ダルガスのあだ名で知られるアンドニス・ディアマンディディスは、
男っぷりのいいパワフルな喉で、情熱的な歌いっぷりが魅力の歌手。
カフェ・アマネー・スタイルの歌もたっぷりと聞けます。
ヴァイオリンの即興に呼応するかけ声が、いなせですねえ。
これぞスミルナ派といった濃厚なレンベーティカを味わえます。
Roza Eskenazy "ROZA ESKENAZY" Ta Nea no number
Giorgos Katsaros "GIORGOS KATSAROS" Ta Nea no number
Marika Papagika "MARIKA PAPAGIKA" Ta Nea no number
Antonis Diamantidis "ANTONIO DIAMANTIDIS" Ta Nea no number