立て続けに買った2枚のフリー・ジャズのCDが、
どちらもウィリアム・パーカーが参加していて、こりゃまたなんという偶然か。
そうと知らずに買ったのは、ドポラリアンズの新作と、
ジェイムズ・ブランドン・ルイスの新グループ、レッド・リリー・クインテット。
ウィリアム・パーカーは、70年代ロフト・ジャズ・シーンに登場し、
その後セシル・テイラーやデヴィッド・S・ウェアとの共演で、
名を馳せたヴェテラン・ベーシスト。日本にも何度か来てますよね。
そのウィリアムとシカゴ・アンダーグラウンド・シーンで活躍するチャド・テイラーが
リズム・セクションを担った、レッド・リリー・クインテットの方に強く惹かれました。
ジェイムズ・ブランドン・ルイスの逞しいテナーが、すごくいいんだな。
デヴィッド・マレイの全盛期をホウフツとさせるブロウに、胸がすきます。
またそのプレイも豪放一本やりではなく、コルネットのカーク・クヌフクとの掛け合いは、
じっくりとした対話となっていて、聴き応えがありますよ。
本作は、植物学者ジョージ・ワシントン・カーヴァー(1864-1943)を
トリビュートした作品。
奴隷として生まれたカーヴァーが、南北戦争後の奴隷解放によって修士課程まで修め、
農学研究につくした人物だということは、今回初めて知りました。
カーヴァーは、綿花の連作で消耗した土地の改良に目を向け、
落花生やサツマイモの輪作を可能とする栽培法を開発しました。
それは南部の貧困を解消しようという、カーヴァーの情熱のたまものだったんですね。
ジャケットに描かれているジェサップ・ワゴンとは、
カーヴァーが新しい農業を広めるために、南部を走り回った移動式実験車のこと。
それをタイトルとしたオープニング・トラックは、
ニュー・オーリンズのマーチング・リズムに、ワークソングを想起させる、
南部フィールたっぷりのメロディが奏でられます。
サックスとコルネットがコール・アンド・レスポンスの形式をとりながら語り合う
‘Fallen Flowers’ は、メロディアスで親しみやすく聞こえるものの、
変拍子を組み合わせた複雑な構成を持つなど、
どの曲もかなり工夫を凝らした建て付けになっていることに気付きます。
ルイスの作曲能力の高さが示されていますね。
緻密なアンサンブルとエモーショナルなプレイのバランスも、絶妙。
チャド・テイラーのドラミングが、とてつもないテクニックを披露していて、
メロディを繊細に叩き分けるかと思えば、一気に疾走してグルーヴを強調するなど、
巧みに場面を動かしていくプレイに、ウナりました。
コットン・フィールドで働く綿摘み女を描いた点描画を見せながら、
ルイスがストーリーテリングするような、アヴァンギャルド・フォーク・ジャズ作品です。
James Brandon Lewis - Red Lily Quintet "JESUP WAGON" TAO Forms TAO05 (2021)