また一人、センバの若手有望株を見つけました。
80年、アンゴラのクアンザ・スル州都スンベに生まれた、ユリ・ダ・クーニャ。
99年にポルトガル、ヴァレンティン・デ・カルヴァーリョからデビューしたシンガーで、
3作目の08年作を手に入れたんですが、これが極上のアルバムなんです。
アクースティックな音づくりの柔らかなグルーヴが、ひたすら心地いいんですよ。
まろやかなビートで始まる1曲目のセンバから、もう頬が緩みっぱなし。
ロック調のギターにサルサ・タッチのホーン・セクションが加わるキゾンバも、
エレクトリックなサウンドのニュアンスは控えめで、
ルンバぽいノリのアップテンポの曲でもビートが丸っこいので、
ルンバ・ロックやンドンボロのような、エッジの利いた激しいビートにならないんですね。
哀愁味のあるメロディのコンパも、ホーンがきまってます。
往年のセンバと変わることのない、シャキシャキとリズムを刻むディカンザの響きも心地よく、
適度にスキマのあるプロダクションが、抜けの良いサウンドを生み出しています。
涼しげな響きのアコーディオンが全編で活躍しているのも嬉しいですね。
泣き節のモルナでは、なめらかな歌いぶりの中に男っぽさをにじませ、
若々しくも味のあるところを聞かせます。
歌・演奏ともに人肌のぬくもりがにじむ、
上質のクレオール・ポップに仕上がった“KUMA KWA KIÉ” でしたが、
4作目の“CANTA ARTUR NUNES” は、タイトルからもわかるとおり、
名歌手アルトゥール・ヌネスの曲集。全編センバで通しています。
ユリ・ダ・クーニャはアルトゥール・ヌネスに強く影響を受けたそうで、
前作“KUMA KWA KIÉ” でも、アルトゥールのラメントの名曲“Belina” を
ストリングス入りで、美しく仕上げてカヴァーしていました。
本作では、エレクトリック・ギター、ベース、ドラムス、ディカンザ、パーカッションの伴奏で、
鍵盤系楽器を使わない往時のセンバのサウンドを再現していて、
アルトゥール・ヌネスを敬愛するユリの思いが伝わる作品となっています。
昨年最新作が出たようなのですが、そちらはまだ未聴。
13年にリリースされた5曲入りシングルCD(ヴィデオ・クリップ3曲入りのDVD付)は、
センバ、キゾンバ、ルンバのほか、
DJがトラックメイクしたエレクトロ・ハウス2曲が収録されていました。
アクースティックなセンバに回帰したといっても、
まだこういうクラブ・サウンドに色気が残っているのが残念ですけど、
早く最新作を聴いてみたいですね。
Yuri Da Cunha "KUMA KWA KIÉ" Kriativa KR011 (2008)
Yuri Da Cunha "CANTA ARTUR NUNES" no label no number (2012)