これが今回一番の拾いモノというか、意外だった一作。
キゾンバの生みの親、エドゥアルド・パインの12年作。
エドゥアルドのCDは何枚か持っていたけど、全部処分しちゃったし、
これもまったく期待できそうにないジャケだなと思ったら、
1曲目から、アコーディオンにヴァイオリンが絡み、
カヴァキーニョが涼し気なコラデイラのリズムを刻むセンバでスタートし、
中盤からホーン・セクションや女性コーラスも交えた、
麗しいキゾンバへスイッチするアレンジに、ノケぞっちゃいました。
エドゥアルドの90年代のアルバムは、いかにもズークの亜流といった
プアなサウンド・プロダクションだったけれど、
見違えるようなクオリティのクレオール・ポップを聞かせるようになったんですねえ。
クレジットを見ると、エドゥアルド・パインが作編曲にプログラミング、
ベースまでこなしているんですね。ドラムスは生ではなくて、
エドゥアルドのプログラミングですけれど、これならOKでしょう。
楽曲がどれも良く、メロディはキャッチーだし、エドゥアルド自身のヴォーカルも、
少ししゃがれ声の庶民的な歌い口で、親しみがわきますね。
エドゥアルド・パインは、64年、コンゴ共和国ブラザヴィルの生まれ。
コンゴへ亡命したアンゴラ人両親のもとに生まれ、アンゴラへ帰国して、
キゾンバの先駆的バンドSOSで活躍しました。
「キゾンバの生みの親」というのは、SOSの歌手時代に、
インタヴュワーから「この音楽はなに?」と問われて、
キゾンバと答えたことから、その名が広まったといわれています。
じっさいにその発言をしたのは、バンドのパーカッショニストのビビだったのですが、
看板歌手のエドゥアルド・パインが、
キゾンバの生みの親と称されるようになったんですね。
エドゥアルドはその後SOSを脱退して、88年にポルトガルへ渡り、
91年にソロ・デビュー作を出し、90年代はコンスタンスにアルバムをリリースしますが、
21世紀に入って歌手活動を停止し、本作はひさしぶりの復帰作だったようです。
カッサヴのジャコブ・デヴァリューがゲスト参加して、
得意のスモーキー・ヴォイスを聞かせる曲もあれば、
ティンバレスをフィーチャーした、ラテン・テイストのセンバでは、
なんとパパ・ウェンバがゲストで歌っています!
また、ラ・ペルフェクタの曲にエドゥアルドがアダプトした曲では、
二人のギタリストが長いソロを弾いているのが聴きもの。
前半のフュージョン調、後半のロック調と、それぞれ個性的なソロで、
別人が弾いているとしか思えないんですが、クレジットには一人の名前しかないなあ。
このほか、クドゥロのシンガーのゾカ・ゾカやアグレCもゲストに迎えていますが、
ここではクドゥロではなく、キゾンバを歌っています。
アコーディオン、管・弦セクション、女性コーラスが彩りを添え、
適度にヌケのあるサウンドのアッパーなダンス・トラックが、てんこ盛り。
キゾンバ生みの親の会心作です。
Eduardo Paim "ETU MU BIETU" no label no number (2012)