南ア・ジャズのサックス奏者ドゥドゥ・プクワナの77年作が、2度目のCD化。
これまでに、オリジナルのままCD化したのは日本だけですけれど、
今回はディスク1枚分の未発表音源を付けてリイシューしたんだから、
これは大事件です。
ボーナス・トラックならぬボーナス・ディスク付きという今回の2枚組CD化、
40年以上このレコードを聴き倒してきた人間には感涙ものなんですが、
いったいどこに眠っていた音源なんでしょうね。
片岡文明さんの解説を読むと、配信のみで流通していた音源とのこと。
え~、ぜんぜん知らなかった~と、慌ててチェックしたところ、
12年にブラック・ライオン・ヴォルト・リマスタード・シリーズの1枚として、
デジタル・リリースされていたようです。
それを今回、日本で初ディスク化したというわけか。これは快挙です!
77年に出た“DIAMOND EXPRESS” は、二つのセッションからなっていて、
B面2曲目の‘Tete And Barbs In My Mind’ だけが、
ドゥドゥのアルトとモンゲジ・フェザのトランペットに、
サクセロとトロンボーンを加えて4管とした、8人編成のセッションだったんですが、
どうやらこちらのセッションのアウトテイクが、残されていたようです。
デジタル・リリースされたアウトテイク集に収録された‘Blue Nick’ は、
‘Tete And Barbs In My Mind’ からタイトルを変えた、フル・ヴァージョン。
‘Tete And Barbs In My Mind’ はエンディングをフェイド・アウトしていましたが、
‘Blue Nick’ はノー・カット・ヴァージョンになっています。
ロック色が強く出た“DIAMOND EXPRESS” のなかで、このトラックだけが、
ブラザーフッド・オヴ・ブレスを想わす異色なフリー・ジャズ演奏だっただけに、
エンディングの強烈なドゥドゥの吹奏をカットして、フリー色を薄めたかったのかも。
ちなみに、アウトテイク集含め、全曲ドゥドゥ・プクワナの作曲なのですが、
この‘Tete And Barbs In My Mind’ = ‘Blue Nick’ だけは、
ピアニストのテテ・ンバンビサとの共作となっていて、
テテとドゥドゥ夫人のバーバラ・プクワナに捧げられています。
60年代初めに、テテがリーダーを務めていたヴォーカル・グループ、
フォー・ヤンクスに参加したのが、ドゥドゥのプロ入り初の仕事だったのでした。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2012-05-19
アウトテイク集では、ドゥドゥがソプラノ・サックスも吹いているのが、聴きどころ。
このレコーディングのあとに急死してしまうモンケジ・フェザのトランペットも、
随所で目の覚めるようなプレイを聞かせています。
ブリティッシュ・ジャズの名手キース・ティペットの転がりまくるピアノは、
痛快そのものですね。
ビバップをフリー解釈した‘Blessing Light’ なんて、すごく面白い。
ソウル・ジャズの‘Black Horse’ では、ペニーホイッスルをドゥドゥが吹きまくっています。
あー、こんな素晴らしい録音が残されていたなんて、もう涙が止まりませ~ん。
最後に、一つだけ不満も。
紙ジャケットはオリジナル盤を表裏とも忠実に再現しながら、
なぜ地の色だけ、ホワイトからペール・オレンジに変えたの?
こういう意味不なデザイン変更が残念でなりません。
ドゥドゥ・プクワナ 「ダイアモンド・エクスプレス+6⃣~コンプリート・フリーダム・レコーディングス」 ミューザック MZCB1441 (1977)