コロナ禍でヴェトナム音楽の新作CDがまったく手に入らなくなってしまいました。
2020年作なんて、1枚も手元にないんだから、惨憺たるありさまです。
喉の渇きを癒したくて、久しぶりに越僑ものに手を伸ばしてみました。
知っている歌手で、誰か新作を出していないかなとチェックしてみたところ、
クィン・ヴィの近作2枚を見つけました。
ずいぶん前にこの人のアルバムを買って、ぼく好みの人と記憶していたんですよね。
その2枚が届いて、気付かされたのは、
ぼくの持っていた09年作がデビュー・アルバムだったということ。
17年作に VOL.2 の表記があって、2作目が出るまで8年もかかったんですね。
クィン・ヴィは、83年ハノイ生まれの歌手。高校卒業後に渡米して、
07年のパリ・バイ・ナイト・タレント・ショー・コンテストで優勝し、
09年にトゥイ・ガからデビュー作を出しました。ぼくが持っていたCDがそれでしたね。
たしかな歌唱力で、クセのない素直な歌いぶりが好ましく、
泣きのバラードを情感を込めて歌っても、歌いすぎることがなく、しっとりとしていて、
胸に心地良い余韻が残ります。
ただ、このアルバムには、男性歌手とデュエットするロック歌謡のような曲があり、
う~ん、こういうのはいらないかな、なんて思っていました。
果たせるかな、今回手に入れた17年・18年作とも、バラード・アルバム。
デビュー作にあったロック歌謡調は姿を消し、17年作にEDMぽい曲があるものの、
メロディが哀調なので、バラード・アルバムのなかのチェンジ・オヴ・ペ-スで、
違和感を感じさせません。
歌もデビュー作から表現力が増しましたよねえ。
ハイ・トーンがよく伸びるようになって、声に磨きがかかりました。
そして18年作は、全曲スロー・バラード。
ホルダー仕様の特殊パッケージに、
ファッション・モデルばりの写真を載せたポスターを封入して、
近年のヴェトナム本国のCDを意識しているのは、間違いないでしょう。
アメリカ盤でこのタイプの美麗ジャケットは、初めて見たなあ。
中身の方も、本国のボレーロ・ブームを意識したプロダクションで、ゴージャス。
ただし楽曲は、オールド・ヴェトナム歌謡のボレーロのような深い叙情ではなく、
香港ポップスに近いドライなバラードといった趣を感じさせます。
そこが本国と越僑の差なのかな。
全曲、悲恋ソングでしょうか。哀切たっぷりの楽曲が並びます。
ちなみに、ヴェトナム民俗色はありません。念のため。
両作とも、男性歌手がゲストで加わってデュエットしている曲がありますが、
男性歌手は、旦那さんのフィ・ヴーのようです。
クイン・ヴィは11年にフィ・ヴーと結婚し、二人の息子がいるとのこと。
久しぶりにヴェトナム歌謡を堪能できて、大満足です。
Quỳnh Vi "GIẤC MƠ ĐÁNH MẤT" Thúy Nga QV01 (2017)
Quỳnh Vi "VẬY LÀ DỦ" Thúy Nga no number (2018)
Quỳnh Vi "VÙI SÂU TRÁI TIM BUỒN" Thúy Nga TNCD453 (2009)