晩夏の幻影 南佳孝
立秋を過ぎ、残暑の気配を感じられる頃になると、 毎年聴き始める、南佳孝の『SOUTH OF THE BORDER』。 40年以上も変わることのない、生涯の晩夏の定盤であります。 今年も、仕事帰りのウォーキングで汗を流しながら、聴いているのでありました。 このレコードが出たのは、大学2年の後期が始まった、たしか9月のこと。 先行シングルの「日付変更線/プールサイド」を聴いて、...
View Articleファミリーが伝えるガリフーナ サリー・エンリケス・レイズ
15年も前に出ていた、知られざるガリフーナの名作を発見しました。 ガリフーナの歌を歌い継いできた家系に生まれたサリー・エンリケス・レイズが、 亡くなった母親セミオナを偲んで制作したアルバム。おそらく自主制作盤でしょう。 アルバム冒頭で、サリーがアルバム制作の意図を述べています。 ジャケットには、サリーの名前が明記されておらず、 ライナーのクレジットに小さく記名があるのみ。...
View Article越僑シーンで渇きを癒すヴェトナム歌謡 クイン・ヴィ
コロナ禍でヴェトナム音楽の新作CDがまったく手に入らなくなってしまいました。 2020年作なんて、1枚も手元にないんだから、惨憺たるありさまです。 喉の渇きを癒したくて、久しぶりに越僑ものに手を伸ばしてみました。 知っている歌手で、誰か新作を出していないかなとチェックしてみたところ、 クィン・ヴィの近作2枚を見つけました。...
View Articleジャズ・サンバのニュー・ディメンション ジャニ・ドゥボッキ
夏の疲れがたまってくると、手が伸びるチルな一枚。 今年もまた棚から取り出してきた、 ジェリー・マリガンとジャニ・ドゥボッキの93年コラボ作です。 ジャニ・ドゥボッキは、85年の“PONTO DE PARTIDA”(乞CD化!)でファンになった人。 フュージョン調の伴奏にのせて、スキャットを駆使した高い歌唱力を聞かせるところは、 MPBシンガーというより、...
View Article代表作はどれ? ラルフ・タマール
マラヴォワの新作“MAIBOL”で、 マルチニークの名クルーナー健在を示してくれたラルフ・タマール。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-01-12 ラルフ・タマールがマラヴォワを87年に退団したのは、 パリで本格的な歌手活動をめざすためだったことは、ご存じのとおり。 同じ87年にカッサヴのジャン=クロード・ネムロと...
View Articleシンセサイズ・フナナーの傑作 アントニオ・サンチェス
カーボ・ヴェルデのアントニオ・サンチェスが生涯にたった1枚だけ残した 83年のLPは、知られざるポップ・フナナーの快作でした。 アナログ・アフリカが、18年にLP限定でリイシューして、 ぼくもこのレコードの存在を知ったんですけれど、玉石混交というより、 ほとんど「石」だらけのポップ・フナナーのなかで、 このレコードは間違いなく「玉」といえる名作でした。...
View Article吐息まじりのディクション ミリヤン・ラトレセ
ミリヤン・ラトラセは、91年マドリッド生まれのジャズ系シンガー・ソングライター。 19年に出したセカンド作が日本に初入荷したんですが、これがやたらと評判がいい。 ぼくも試しに聴いてみたところ、いやあ、オドロきました。 このひともまた、グレッチェン・パーラトのミームとして増殖した歌手のひとりですね。 じっさいミリヤン・ラトレセがグレッチェンに影響を受けたかどうかは知りませんが、...
View Articleソウル・マンここにあり ロバート・フィンリー
62歳で出したロバート・フィンリーのデビュー作には、ヤラれました。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-01-27 その歌声には、苦渋に満ちた人生が凝縮されていて、 ドロリと溶け出してくる情感と、それに呼応するサザン・ソウル・サウンドに、 ただただ泣くことしかできませんでしたからねえ。...
View ArticleニジェールのDIY・ヒップ・ホップ ママキ・ボーイズ
長年身元不明だったニジェールのヒップ・ホップCDの正体が、ついに判明。 サヘル・サウンズがなんとフィジカル化してくれたおかげなんですが、 まさかこんなローカルなシロモノが、LP化されるとは思わなんだ。 さすがはモノ好きなサヘル・サウンズと、ニヤニヤが止まりません。 おかげでママキ・ボーイズが何者なのか、よーくわかりましたよ。 実はぼくの手元にあるCD-Rは、...
View Articleアフロ・ソウル・ジャズの傑作 トーシン・アリビサラ
アメリカ在住ナイジェリア人ドラマー、トーシン・アリビサラの18年作。 ローパドープから出ていたんですね。知らなかったなあ。 セッション・ドラマーとして活躍している人で フェミ・クティの“SHOKI SHOKI” や フェラ・クティ・トリビュートの“RED HOT + RIOT” で、 トーシンのドラミングが聞けるほか、 イェルバ・ブエナの大傑作“PRESIDENT ALIEN”...
View Articleアフロビート詩人は精神科医 イクウンガ
トーシン・アリビサラのキャリアをチェックしていて、 イクウンガの15年作に、コンガとパーカッションで参加していることに気付きました。 そういえばイクウンガって、話題にしたことがありませんでしたね。 せっかくなので、イクウンガについて、ちょっと書いておこうかな。 イクウンガことイクウンガ・ウォノディは、 ナイジェリア南東部リヴァーズ州の州都ポート・ハーコート出身の詩人。...
View Article驚きのデビュー作 カロル・ナイーニ
ブラジルの女性シンガー・ソングライター、 カロル・ナイーニのデビュー作がトンデモない。 17年のセカンドを聴いて、ガル・コスタやジョイスに代表される、 ブラジルのフィメール・シンガーに特徴的な、 ちょっと鼻にかかる美声にホレボレとしていましたけれど、 こんなにトガったサウンドのデビュー作を出していたとは、知らなんだ。 いや、トガった、という表現は、ちょっと不適切かな。...
View Articleンビーラ名手の忘れがたき名盤 エファット・ムジュール
わぁ、懐かしい! ジンバブウェのンビーラ・マスター、エファット・ムジュール率いる ザ・スピリット・オヴ・ピープルの83年セカンド作がCD化。 ザ・スピリット・オヴ・ピープル名義で出したエファット・ムジュールの 80年代の3作のうち、いちばん愛聴したのが、このレコードだったんだよな。 これをCD化するとは、オウサム・テープス・フロム・アフリカ主宰の ブライアン・シンコヴィッツ、わかってるねえ。...
View Articleコックピットでサルサ ウィリー・モラーレス
今年の春先は、リトル・ジョニー・リベーロの“GOLPE DURO” に、 「グァグァンコー最高!」とばかり、ずいぶんケツを振ったもんです。 (1曲目の‘Quien Te Ha Dicho’ のホーンズが、鳥肌ものでしたねっ) https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-04-06 あの一枚で、すっかりサルサ熱が返り咲いちゃいましたが、...
View Article初のフル・アルバム・リイシュー シティ・ビンティ・サアド
ロニー・グレアムさんといえば、 88年に出版した“Stern's Guide to Contemporary African Music” に、 どれだけお世話になったことか。ぼくだけじゃなく、古手のアフリカ音楽ファンにとっては、 92年の続編ともども、マスト・アイテムの必携書でしたね。 ロニーさんは、グレイム・イーウェンズ、チャールズ・イスモンとともに、...
View Articleエキストラになった東アフリカのドライ・ギター フランシス・ラファエル・ムワキチメ
新生レトロタンの2番は、ギタリストのフランシス・ラファエル・ムワキチメ。 旧レトロタン時代の95年にリリースされていたカセット作品の再発です。 フランシス・ムワキチメは、イギリス領タンガニーカ時代の1920年代に、 内陸の中南部にあるイリンガ地区のトサマガンガに生まれました。 地元のカトリック小学校に通い、神父の指導でブラスバンドに加わり、 トランペットの演奏を始めます。...
View Article伝説の父を継いで ディディエ・ボスコ・ムウェンダ
レトロタンの3番は、ディディエ・ボスコ・ムウェンダ。 52年にヒュー・トレイシーが見出し、名曲‘Masannga’ でアフリカのギター史に その名を残したギタリスト、ジャン・ボスコ・ムウェンダの息子です。 ジャン・ボスコ・ムウェンダは、カタンガ地方に広まっていたギター奏法を発展させ、 東アフリカでドライ・ギターと称されるギター・スタイルを確立したパイオニアです。...
View ArticleアンビエントR&Bにヒストリーあり エリカ・ド・カシエール
うわ~、これは、トロけるなぁ。 去年ココロ射抜かれたジェネイ・アイコやケラーニとおんなじテイストで、 ぼくをトリコにする歌声の持ち主ですね、この人は。 コペンハーゲンから登場した、アンビエントR&Bの新鋭、エリカ・ド・カシエール。 日本のみで出たデビュー作CDは、チェックしそびれていましたが、 4ADに移籍して出した第2作は、冒頭の曲を十数秒聴いて、即買いしましたよ。...
View Articleクロスオーヴァー蘇るパワー・トリオ ショウン・マーティン
ひょんなことから、ハービー・ハンコックの“SUNLIGHT”(78) を聴き返してみたら えらくハマってしまって。ウン十年ぶりに聴き返したけれど、古くなってない、 なんてことはぜんぜんなくて、思いっきり古さは感じるものの、 こんなに熱量のある演奏だったっけと、そこにすごく意外感があったんでした。 60年代のジャズ・ロック、70年代のクロスオーヴァー、80年代のフュージョン、...
View Article中国歌壇の新傾向 張可兒
中国人女性歌手を聴くのは、いつ以来でしょうね。 ずいぶんと長い間聴いてなかった気がするけれど、 ニコール・チャンというこの女性歌手、 現代中国歌謡きっての人気歌手だそうです。 こんなにひっそりと歌う、控えめな歌い口のシンガーが、一番人気というのは、 中国人のイメージからすごく遠い感じがして、不思議な気がするんですけど、 ぼくの中国人イメージが偏見にまみれてるからなのかしらん。...
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