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代表作はどれ? ラルフ・タマール

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Ralph Thamar  EXIL.jpg

マラヴォワの新作“MAIBOL”で、
マルチニークの名クルーナー健在を示してくれたラルフ・タマール。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-01-12
ラルフ・タマールがマラヴォワを87年に退団したのは、
パリで本格的な歌手活動をめざすためだったことは、ご存じのとおり。
同じ87年にカッサヴのジャン=クロード・ネムロと
ジョルジュ・デシムスのプロデュースで、ジョルジュ・デブスのGDプロダクションから
ソロ・デビュー・アルバム“EXIL” を出したんでした。

以来、タマールのソロ・アルバムをずっと聴いてきましたけれど、
タマールの代表作というと、どれになるのかなあ。
どれも決定打に欠けるというか、これ!というアルバムが思い浮かばないんですよね。

Ralph Thamar  LA  MARSEILLAISE NOIRE.jpg

ぼくが一番愛着があるのは、98年の奴隷解放150年を記念したアルバムで、
グアドループの作曲家ジェラール・ラ・ヴィニの曲を取り上げた
“LA MARSEILLAISE NOIRE”。
あのアルバムにはビギンやマズルカばかりでなく、ボンバ、カリプソ、メレンゲもあり、
ジェラール・ラ・ヴィニを題材として汎カリブ音楽を取り上げた、
スケールの大きな作品でした。

大力作ではあったものの、トリビュートものという企画作ゆえ、
タマールの代表作と呼ぶには、ちょっとためらいもおぼえてしまうんです。
そう考えると、カッサヴ所属のGDプロダクションからデビューして、
ズーク色の強いデジタル・サウンドのなかでは、
タマールのクルーナーとしての魅力を発揮できなかったように思えるんですよね。

Ralph Thamar & Mario Canonge  HOMMAGE À MARIUS CULTIER.jpg

“LA MARSEILLAISE NOIRE” 以外では、
ピアニストのマリオ・カノンジュとの共同名義作で、
近年再評価著しいピアニストのマリウス・クルティエをトリビュートした
“HOMMAGE À MARIUS CULTIER” が、タマールの魅力をよく映し出していました。
若き日のタマールは、ピアニストのマリウス・クルティエのもとで修行していたんですね。
でも、これもトリビュートものだしなあ。やっぱり、ビギン主体の生演奏のサウンドが、
タマールにはやっぱりよく似合うということなんだと思います。

Ralph Thamar  UN JOUR.jpg

やはり00年代以降のアクースティック回帰の音づくりになってからの方が、
タマールのヴェルヴェット・ヴォイスは魅力を放ちましたね。
ビギン・ジャズ・ピアニストのロナルド・チュールがキー・パーソンとなった
02年作の“UN JOUR” も良かったしねえ。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-10-07
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-02-20

Turbo Ⅱ  VOLUME 2.jpg

でも、デジタル・ズーク時代にも、聴き逃せないレコーディングはありました。
ジャン=クロード・ネムロのプロジェクトのターボ・II では、
ビギン、シューヴァル・ブワ、カドリーユなどのマルチニークの伝統リズムを使って、
デジタル・サウンドとの融合をトライしていました。
デジタル・ビートに絡むタンブー(太鼓)の生音が絶妙なブレンド具合で、
リード・ヴォーカルで参加したタマールも、セクシーな歌いぶりを聞かせていました。

ターボ・II は2枚のアルバムしか残しませんでしたが、
2作目には、ベースのティエリー・ファンファン、
パーカッションのデデ・サン=プリも参加して、実力者が脇を固めていました。
カーニヴァル色を打ち出したアゲアゲのアルバムで、ラスト・トラックでは、
「グアンタナメラ」のクレオール・ヴァージョン‘Sa Ou Ka Lavé’ で
大団円を迎えるという10曲以上のメドレーが、最高潮に盛り上げてくれます。
ジャケットには、なんと、金髪のウイッグをつけて女装したタマール(!)が、
バイクの一番後ろにまたがっていますよ。

90年頃というと、ロナルド・ルビネルが主導したエスニカラーというプロジェクトでも、
マルチニークの伝統リズムとデジタル・サウンドを融合し、ヒップ・ホップも取り入れた
サウンドに挑戦していて、伝統回帰がひとつのトレンドになっていた時期でしたね。
そうそう、エスニカラーにもタマールは参加していたし、エディット・ルフェール、
ジョセリーヌ・ベロアール、ジャン=フィリップ・マルテリーといった歌手陣に、
ジャコブ・デヴァリュー、ティエリー・ファンファン、デデ・サン=プリなど、
オールスター勢揃いでした。
このターボ・II もそうした流れのアルバムだったと思いますが、
当時ほとんど知られていなかったから、タマール・ファンでも知らない人は多いかも。

ソロ・アルバムで決定作がなくても、往年のマラヴォワ、そして復帰後のマラヴォワに
名作は目白押しなんだから、なにも困ることはないってか。

Ralph Thamar "EXIL" GD Productions GDC45004 (1987)
Ralph Thamar "LA MARSEILLAISE NOIRE" Wagram 3045252/WAG334 (1998)
Ralph Thamar & Mario Canonge "HOMMAGE À MARIUS CULTIER" Déclic Communication 09702-2 (1994)
Ralph Thamar "UN JOUR" Créon Music 5806172 (2002)
Turbo Ⅱ "VOLUME 2" Sonodisc CDS7234 (1991)

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